アイドル誕生番組に勝ち抜いて大統領に自爆テロ!

TomoMachi2006-04-22

こんな国を想像してごらん。
大統領は新聞を読まず、
政府は間違った理由で戦争に突き進み、
大統領選挙に投票するよりも多くの国民がアイドルに投票する国を

 映画『アメリカン・ドリームズ』のポスターにはそんなことが書いてある。
「こんな国」というのはもちろんアメリカのこと。
「アイドルに投票する」というのは、勝ち抜きアイドル・コンテスト番組「アメリカン・アイドル」で、毎週、視聴者による電話の人気投票で参加者を選抜していくことを指している。

 この映画は「アメリカン・ドリームズ」という「アメリカン・アイドル」そっくりのテレビ番組に、ブッシュ大統領そっくりな大統領が出演するというコメディだ。

 大統領再選の翌日から映画は始まる。苦戦の末、勝ったことに喜んだ大統領(デニス・クエイド)は勝利を確認するため、普段は絶対に読まないNYタイムズを読んでみることにした(ブッシュ大統領は自分に批判的なNYタイムズやワシントンポストを読まないと言われている)。
 読んでみて驚いた。イラク戦争はどうも間違っているらしい。
 あわてて、英ガーディアン紙などを読んだ大統領は、イラク戦争はとんでもない間違いだと確信していった。そして、ディック・チェイニー副大統領そっくりのハゲヅラをかぶったウィレム・デフォー補佐官に尋ねる。
「君は知ってたか? イラキスタンには三種類いるらしいぞ」
「スンニ、シーア、クルドのことですか?」
「……知ってたのか」
 何も知らない大統領は、それまでずっと補佐官たちから傀儡として操られていたのだが、事実を知って大統領の精神の安定は崩れてしまう。
 そこで、デフォー補佐官は大統領の耳に仕込んだ超小型受信機で、自分の言うとおりに大統領にしゃべらせる(ブッシュ大統領はケリー候補との討論の時、カール・ローブ補佐官から無線で操縦されていたと言われた)。
 操り人形にすぎない大統領はみじめな気持ちで引きこもりになり、昔のようにアルコールとコカインに戻りそうになる。
 そこで補佐官は、大統領の大好きなテレビ番組「アメリカン・ドリームズ」にゲスト審査員として特別出演させようとする。
アメリカン・ドリームズ」のプロデューサー兼司会者は血も涙もないエゴイストのイギリス人、ヒュー・グラント(「アメリカン・アイドル」も元はイギリスの番組で、イギリス人審査員サイモン・コーウェルの血も涙もない批評がウリのひとつ)。
 グラントは、番組のマンネリを打開するため、もっと変わった出場者を探せとスタッフに命じる。
 そうして選ばれたのが、まずは、オハイオ出身のブリットニー・スピアーズもどきのマンディ・ムーア(シャレにならん)。彼女はよくいる貧乏なホワイトトラッシュの歌手志望だが(「アメリカン・アイドル」の初代優勝者ケリー・クラークソンもそうだった)、恋人(ケヴィン・クライン)がイラク戦争に従軍して負傷した、という泣かせるウリがあった(実はクラインはムーアに捨てられてヤケクソでイラクに行ったのだが)。
 もう一人のアイドル候補は、イラク移民のオマール。歌も踊りもヘナチョコで、ルックスも全然イケてない兄ちゃんだが、ヒュー・グラントはそこが面白いと思ったのだ(本物の『アメリカン・アイドル』で最初に人気になったのは、予選で落とされた歌も顔もまるっきりダメな香港系移民のウィリアム・ハンだった)。
 ヒュー・グラントの企みどおり、マンディ・ムーアとオマールは視聴者の投票を集め、順調に勝ち抜いていく。
 ところが、実は、オマールはバグダットに住む母親をアメリカ軍の爆撃で殺され、アルカイダに身を投じたテロリストだった。
 彼の使命は優勝決定戦の特別審査員になるアメリカ大統領を自爆テロで暗殺すること。
 そのためには何が何でも、アメリカ国民に最高に愛されるアイドルにならねばならないのだ! 


 というわけで、詳しくは、火曜日の「コラムの花道」で!
予告編はココ。
http://www.themoviebox.net/movies/2006/0-9ABC/American-Dreamz/trailer.php