飛び越される州の逆襲

TomoMachi2004-11-20

右はPaul Conradの新聞マンガ。
真っ赤なアメリカに「赤字」と書いてあって、その下にはこんなコメント。
「オッケー、じゃあ赤い州(ブッシュに投票した州)にこの財政赤字を払ってもらおうじゃないか」


金持ちと大企業優遇の減税と戦争でアメリカが抱えた巨大な赤字に赤い州が無関心なのはなぜだろう? 
赤い州はもともと税金を払う額よりも受ける額のほうが大きい。赤字を払うなど最初っから赤い州にはできない相談なのだ。


 経済誌『フォーチュン』にマット・ミラーは「赤い州青い州の施しを受けている」と書いた。http://www.fortune.com/fortune/careers/articles/0,15114,781000,00.html?cnn=yes


 青い州、つまりケリーが勝った東部、五大湖地方、西海岸は、アメリカの産業、経済、文化、それに人口が集中しているので(ペンシルヴェニアを除いて)莫大な連邦税を納めている。91年から2001年にかけてニューヨーク州、およびシカゴのあるイリノイ州が国に払った税金から、国から受け取った福祉や援助金を差し引いた額はそれぞれ2500億ドルに及ぶ。要するに青い州国税を払う額は受ける額よりも莫大に大きい。

 
 逆に、赤い州、つまりブッシュが勝った南部や西部は(テキサスを除いて)貧しく、人口が少ないので、国から受けた恩恵から払った税金を引いた合計額は1兆ドルを超える。赤い州は税金を払う額よりも、受ける額のほうが莫大に大きい。


 マット・ミラーは、経済的には赤い州青い州の施しを受けて生きているが、政治的には赤い州青い州を支配しているという。赤い州が選んだ候補が大統領になり、州の数が多いので議会での議席数も多い。赤い州が国の財政や戦争をコントロールし、その結果増えた莫大な赤字を、青い州が負担させられる。
 しかも、選挙人制度のため、赤い州のほうが一票が「重い」。たとえば人口のまばらなワイオミングの農民のほうが、ロサンジェルスのビジネスマンより四倍も票が重い。


 マット・ミラーは言葉に気をつけているが、要するにアメリカは内部に第三世界を抱え込んでいる。赤い州は牧畜や穀物農業というアメリカの食卓を支えており、赤い州の賃金や年収が安く抑えられていることで、青い州は安く食料を供給されている。この経済的上下関係は国政において逆転する。


 赤い州はFlyover Territoryと呼ばれることもある。NYや西海岸やシカゴに住むビジネスマンたちはアメリカ大陸を飛び回るが、この赤い州の上は飛行機で飛び越すだけでめったに足を踏み入れないからだ。経済や文化をリードする人々たちは、普段、赤い州のことを忘れている。しかし、選挙になると、赤い州の人々の数の多さを思い知らされることになるわけだ。