昨日の続きだが、『裸の自衛隊!』が復刻されるとのこと。
オイラが企画編集をした別冊宝島はベストセラーになったが、
その年のボーナスでオイラがもらったのは規定どおりの2・5ヶ月。
ヒラだったので、50万円くらいだった。
ベストセラーになったことで一万円もらっただけ。
ヒデエなあと思ったけど、青色ダイオードみたいなもんだ。


この本はとにかく準備が大変だった。
取材許可を取るため六本木の防衛庁の広報課に何度も何度も通った。
というのも、当時の自衛隊は外部に対してまったく閉じていて、
やっと『ベストガイ』に協力し始めたところだったからだ。
で、防衛庁参りの末、やっと取材許可を取ったものの、
広報立会いの取材は使わなかった。
そこで知り合った自衛官を、勤務時間外に飲み屋に連れ出して煽りまくって
本音を言わせたのだ。
だから『裸の自衛隊』ができた後、海上自衛隊の幕僚本部ほかから大変な抗議があったが、オイラはつっぱねた。
「この本は結果的に自衛隊にとっていい結果になるはずですよ」と言って。
その後、この『裸の自衛隊』をマネした「自衛官の本音」本や雑誌記事、テレビ番組が次々に生まれ、結果的に自衛隊のイメージは明るく身近になった。


この『裸の自衛隊』は「兵隊になりたい!」というオイラのガキの頃からの夢を実現させるために無理やり通してもらった企画だった。
とにかく軍服着たり、鉄砲撃ったりするのが大好きだったが、在日韓国人だから自衛隊には入れない。というか政治的には日本も当時の韓国の軍事政権も北朝鮮も大嫌いなのだ。
要するに政治的には反戦的なんだけど、オタク的には戦争が好きで好きでしょうがない。
兵隊として戦争に行きたくてしょうがないんだけど、何のために戦うか、とりあえず理由がない。それになまじ戦争の本ばかり読んでるので戦争の愚かさもわかっている。でも頭ではなくて「男の子」の部分でやりたくてしょうがない。
こういう人は他にもいっぱいいると思うのだが、で、自分は「何が何でも自衛隊体験入隊したい!」と思って、その欲望を仕事に無理やり結びつけた結果が『裸の自衛隊』なわけだ。
で、どうせ入隊するなら「最強精鋭」と言われる空挺師団を選んだ。
でも、自分は会社員で編集者で、しかもペーペーだから、
原稿を書くのは名のある書き手でなければならなかった。
そこで大月隆寛さんに頼んで、一緒に習志野の空挺師団に入ったのだが、
これがもう実に楽しかったね。
空挺体操とか、落下傘の訓練とか、キツければキツいほど楽しい。
師団の隊員全員が入った風呂がドロドロで文字通り真っ黒だったり、
保護観察を免れるために入隊したヤク中やシンナー中毒の隊員とか、
あと夜中に叩き起こされて行軍訓練されるのも楽しかった。
で、うきうきしながら岐路についたのだが、
大月さんは楽しくなかったらしく、
帰りの電車で、「なんでこんなつらい思いさせられなきゃいけないんだ」と怒り出した。こっちも必死に説得したのだが、最後にはつい逆ギレして、
「いいよ! オレが書くから!」と怒鳴ってケンカ別れ。
その後、頭を下げて大月さんには素晴らしい原稿を書いてもらったけど、
自分が楽しいものは他の人も楽しいはすだと思うのはよくないと反省しました。
その『裸の自衛隊』では別に大泉実成さんを誘って、元フランス外人部隊の毛利元貞くんが主催する傭兵学校に入って、一週間飲まず食わず眠らずの地獄の訓練をやったら、大泉さんは途中で脱落して、「町山君がやりたかっただけだろ! 他の人を巻き込むなよ!」ってやっぱり怒られた。
でも楽しかったなあ。