別冊宝島復刻という記事をネットで見つけた。
http://tkj.jp/tkj/1000/
このうち『裸の自衛隊!』はオイラの企画編集。
『セックスというお仕事』『プロレス名勝負読本』はオイラのアイデアである。実際に編集したのは小嶋さんと内池くん。
また『死体の本』にオイラは死体解剖見物記を書いている。
この『死体の本』、いちど宝島文庫になったが、日本に帰った時に書店で見つけて嫌な気分になった。
オイラの死体解剖見物記が削除されていたのだ。
理由はよく知らないが、たぶんこれを書いた時、オイラは宝島社の社員だったので、これが文庫になると印税が発生するかどうか微妙な問題になるので、面倒くさいから削除してしまったのだと思う。


しかし問題は、オイラの死体解剖見物記を除いてしまうと『死体の本』に集められた原稿は実際に死体を見たことのない連中の書いたものばかりになってしまうのだ。


つまり本で読んだ知識だけの連中の知ったかぶりだ。


オイラの記事はそういうのとは違うので本屋で「最後まで」立ち読みしてください。


その「死体の本」でも噴飯ものは永江朗さんの「死体洗いのバイト」の検証記事である。
これは大江健三郎芥川賞受賞作『死者の奢り』に描かれた死体洗いのバイトは実在するのか? ということでいろいろ探して、結局見つかりませんでした、どうも都市伝説ではないかしら、という記事なのだが、ツッコミがヌルすぎる。


大江健三郎は、アルコールのプールに漬けられた死体を洗うバイトを通して、サルトルまがいの実存主義的問いを綴っているが、
ちょっと待て、アルコールは揮発性だ。プールのような状態にしたら大量に気化して、バイトは吸い込んだら酩酊してしまうし、すぐに大爆発するだろう。


要するに、大江健三郎のこの小説は口からでまかせのデタラメなのだ。


ホルマリンに漬けるという方法もあるが、プールのようにはできない。ホルマリンも気化するし、それを吸うと死んでしまう。
永江さんの記事はそういう基本的なことに一切突っ込んでんない。
(オイラは長らく永江さんの担当編集者だったが、この人、いつも記事が無難すぎた。たぶんわかってるんだろうが、常識人としての抑制が効きすぎなのだ)


とにかく、大江健三郎は死体洗いのバイトという都市伝説を聞いて適当に話をでっち上げただけなのだ。
それを激賞して作家にしてしまった選考委員、それに当時の文壇の科学的一般常識のなさにアキれるが、
そんな実体験のともなわない、他人のマネっこ小説で世に出た作家が将来ノーベル賞を取ったのだ。要するに文学界なんてアルコールやホルマリンの性質も知らないレベルの連中がやってるくーだらない、くーだらない世界なわけだ。


文学なんてみんな創作じゃないか、という意見もあるだろう。


でも、オイラがアキレたのは『死者の奢り』の受賞時に文壇やジャーナリズムから
一度も「これは科学的にありえない。嘘っぱちでは?」というツッコミすら誰もしなかった、ということだ(検証した永江氏ですら)。
で、オイラは「文学ってこんなんでいいの?」とアキレかえり、それ以来、
『直撃!地獄拳』とか『青春チンポジウム』とか『サンドバギー ドカンと3発!』しか信じられない体になってしまいましたとさ。