監督スパイク・リー
息子への接近禁止令を受けたエミネムの母親の視点で撮られたビデオ。
母さん、俺にがっかりしてるとは思うよ
母さんは、日々幸福なのにと言うけど
なんで電気は止められて、僕はグレちまったの
母さん、父さんはもういないんだよ
僕を責めないでおくれ
もう一杯、お酒を注ぎながら
僕らは僕らでしかないと思うんだ
闇夜の中、ヘッドライトが光っている
ずいぶん遠くまで来てしまった
僕は焦りすぎて、自分の言葉が傷つける人たちのことを考える余裕がなかった
僕のラップで、いちばんの火傷を負ったのは母さんだ
でも、母さんと同じで僕は頑固だから、やりすぎてしまった
『クリーニング・アウト・マイ・クローゼット』なんかの歌で
それでもね、僕は母さんを憎んでないんだよ
だって母さんは僕にとって今も美しいから、だって僕の母さんだから
静かすぎる家庭も嫌だけど、うちはベトナム戦争みたいだったね
湾岸戦争というか、僕と母さんは原爆さえ作りかねなかった
まるで化学戦争で、僕らはいつまでもケンカし続けた
覚えてるかどうかわからないけど、クリスマスツリーの下にプレゼントがあった
本気かい、僕に出てけっていうの？
クリスマスイブで外は零下の寒さだった
「生意気なチビ、この家を出ろ」
母さん、せめてコートを取らせてくれ
何でも責められるところを見つければ、僕らは互いの喉に食らいついた
特に、僕らを捨てた父さんについては、僕らは同じ被害者だった
それで僕らは親密になったと母さんは思った
僕らは父さんに捨てられておかしくなったけど、絆は深まったと
ヘッドライトは光る
僕らは車に一切合財詰め込んで
道の向こうにあるおばあちゃんの家に戻った
おばあちゃんの家で僕はいちばん年上の男だった
僕の肩に生活がのしかかった
弟のネイトが8歳の時、州政府は母さんにはネイトを育てる能力はないとみなして、ネイトを強制的に里子に出した
その頃だ 母さんがひどいアル中で更生の見込みがないと気づいたのは
それから今まで、僕は母さんと疎遠だ
好きでそうしたわけじゃないけど
だから母さんは自分の孫が成長するのも見られなかった
「クリーニング・アウト・マイ・クローゼット」なんか歌って悪かった
あの頃はまだ怒っていたんだ
もちろん、今はあんな風には思ってない
今は、母さんのせいだと思ってないから、ジョークなんかにしない
あの歌はもう二度とステージで歌わない
ラジオで流れてくるたびに縮みあがるよ
ネイトは飲酒運転で捕まったりしたけど今は僕が面倒みてる
母さんは僕らに薬を与えたね 僕は母さんにも薬を味あわせたかったよ
でも、今は薬が母さんを引き受けてる
母さんの精神状態の悪化は落ち着いてきた
僕は子どもみたいにもう泣けない
確かにつらいことばかりだったけど、母さん
僕もネイトももう母さんを恨んでないよ
母さんがしたこと、言ったことは母さんが僕らにできる精一杯だったんだ
里子に出したことは、母さんが首につけてるのと同じ、重い十字架だ
でも、愛しているよ デビー・マザーズ
ああ、僕らはなんて蜘蛛の巣にからまってしまったんだろう
だって僕は、音信不通の父さんはどこにいるのか、決して尋ねなかった
くそったれ、きっと父さんは僕らの住所をおっかけられなかったのさ
でも、もし僕だったらは必死に子どもたちの行方を追っただろう
世界中のマットレスや石やサボテンをひっくり返してね
世界中の地図を集めて、子どもたちを地球の果てまで探しただろう
僕の子どもを連れ去った奴は絶対に許さない
サンタの格好をして煙突から忍び込んで子どもを奪い返す
うちの娘はいちどだけお婆ちゃんに会った
ある晩、母さんがうちの家の入口に来た時だ
ちょうど僕と娘とネイトはハンバーガーを買いに出ようとしたところだった
僕らは母さんを娘に紹介して、母さんを抱きしめた
母さんが僕らとは違う道に去って行った後、
耐えがたい悲しみが僕を襲った
僕は母さんの車のヘッドライドを見送りながら自分に怒った
ありがとうと言えばよかった
僕の母さんになってくれて
僕の父さんになってくれて
だから母さん、今、ジェット機の上で書いているこの手紙を受け取って欲しい
死ぬ前にこの気持ちを胸から吐き出さないと
スチュワーデスは「シートベルトをお締めください」と言う
飛行機は揺れている 落ちるかもしれない
これが夢でなければ 母さんにこの気持ちが届いてほしい
いつだって遠くから母さんを愛している
だって僕の母さんだから
僕は新しい人生を始めたい
理由はないけど 綺麗にするんだ
僕は今夜、家に帰る
どんなことをしてでも
もし、飛行機が墜落しても
もし、乗組員が僕を起こしてくれなくても
僕は平気さ
死ぬのなんか怖くなかった
たとえ僕には歌うべき使命が残っているとしても
僕の子どもたちが後を継いでくれるだろう
だから僕は大丈夫
死ぬのは怖くなかった
だって僕は僕の娘を信じているから
だから僕はこの残酷な世界にさよならは言わない
もう僕は大丈夫だから
いつ死んでも平気だから
