ディクシー・チックスはまだ怒っている傷ついている

TomoMachi2006-05-19

ディクシー・チックスのニューシングル「ノット・レディ・トゥ・メイク・ナイス」はすごい(↓ビデオは異端審問で裁かれた三人が抵抗し続けるという内容)。


ディクシー・チックス(直訳:南部のお姉ちゃんたち)はカントリー&ウェスタン(C&W)の女性三人組だが、
2003年にイラク攻撃を批判して、「ブッシュと同じテキサス出身で恥ずかしい」と発言したために、歌手として抹殺されそうになっただけでなく、とうとう命まで脅かされた。


全米のラジオ局の6割以上を独占するクリアチャンネル(ブッシュに莫大な献金をしている)によって放送禁止にされた。
つまり彼女たちの曲はラジオでほとんどかからなくなった。
カントリーは古きよき西部のファンタジー愛する人々の音楽なので、保守的で右翼的なリスナーが多い。
男は荒くれで飲んだくれで女好きのカウボーイで、女は男をじっと黙って待っている、という演歌の世界なのだ。
ところがディクシー・チックスはそういう男尊女卑を正面から批判してDV男の歌を歌ったり、カントリー界の反逆児だったのだ。
そして今回、クリアチャンネルに煽られてカントリー・ファンのチックス・バッシングが爆発した。
クリアチャンネルのC&W専門局のDJがリスナーに呼びかけてディクシー・チックスのCDを集め、ブルドーザーでひき潰した。
また、クリアチャンネルが主催したイラク攻撃に賛成する集会でも彼女たちのCDが焼き捨てられた。
しかし問題はクリアチャンネルよりも、草の根愛国者たちのディクシー・チックスに対する凄まじいバッシングだ。それはまさに魔女を裁判にかけようとする、松明を持った群集そのものだった。
ウェブサイトやブログにはチックスへの下品な誹謗中傷(コラージュなど)があふれた。
脅迫状が彼女らのもとに殺到した。
「裏切り者」
売国奴
「非国民」
「テロリストの味方」
「この国から出て行け」
イラクに行け」
「黙らないと殺すぞ」という手紙まであった。
幼い娘たちの身を案じたチックスたちはけっきょく謝罪するはめに追い込まれた。
ちなみにオイラがルワンダ虐殺を関東大震災朝鮮人虐殺と比較したときも、ほとんど同じような匿名メールが日本からわんさか来たけどね。
相手を「殺すぞ」などと脅して黙らせようとした側が正しかったことが歴史上一回でもあるかね?


謝罪した後もディクシー・チックスは戦争とブッシュに反対し続け、彼女たちの仕事場だったカントリーの世界から完全に追い出された。
しかし、この事件で、それまでカントリーなど聴かなかったフォーク&ロックのファンをつかんで、ジャンルを超えたミュージシャンになった。
とはいえ、彼女たちは、自分たちがされたことを忘れてはいない。


新作シングル「ノット・レデイ・トゥ・メイク・ナイス」は「まだ、いい人なんかにはなれないわ」てな意味で、こんな歌詞だ。
http://www.youtube.com/watch?v=fwc5YSAc-7g&search=dixie%20chicks

許す、それもいいわね
忘れる、私にできるかしら
時がくれば傷は癒えると人は言うけれど
その日が来るのをまだ待ってるの


もう疑ってさえいないわ
何もかもわかってしまったの
私は代償を払わされて
今も払い続けている


まだ、いい人なんかにはなれない
まだ、引き下がるわけにはいかない
まだ、私は本当に怒っている
遠まわしに言ってるヒマはないの
元の鞘に戻すには遅すぎる
できたとしてもやらないわ
だって私はまだ怒っているんだから
あなたたちの助言になんか従えないわ


あなたは言うでしょう
もう忘れなよ、って
でも、あれで私たちの人生は変わってしまったのよ
それでよかったけどね


ベッドに入ってベイビーみたいに眠りなさい
何も後悔しないで、何を言っても気にしないで
母親にとって悲しいことね
自分の娘に、知らない人を憎むように教えるなんて
私の言葉にいくら怒ったからって、
どうしてあんな手紙が書けるの?
「黙って歌だけ歌ってろ!
でないとお前の命はないぞ」なんて!


まだ、いい人なんかにはなれない
まだ、引き下がるわけにはいかない
まだ、私は本当に怒っている
まわりくどいことをしてるヒマはないの
元の鞘に戻すには遅すぎる
できたとしてもやらないわ
だって私はまだ怒っているんだから
あなたたちの助言になんか従えないわ


許す、それっていい言葉ね
忘れる、私にはまだできないわ
時がすべてを癒すというけれど
私の痛みはまだ消えはしない