トロント映画祭④秘密のかけら
朝10時から『ウォレス&グロミット』劇場版「人ウサギの呪い」の試写。
タイトルからわかるように、「狼男」や「フランケンシュタイン」などユニヴァーサルの怪奇映画のパロディで、畑を荒らすウサギを駆除するウォレスとグロミットが、巨大ウサギと戦うのだが、その正体は……。
クライマックスは大怪獣映画。
夜はアトム・エゴヤン監督の新作『秘密のかけら』(写真)のプレミア。
これはエゴヤンにとって初めてアメリカを舞台にした映画。
50年代ハリウッドで一斉を風靡したディーン・マーティンとジェリー・ルイスをモデルにしたコメディアン・コンビ(コリン・ファースとケヴィン・ベーコン)、
彼らの伝記を書くため、72年に新人女流作家(アリソン・ローマン)が取材するうちに、彼らのホテルの部屋でメイドの変死体が発見された事件が浮かび上がる。
エゴヤンの映画といえばカナダのようにBLEAK(寒々しい)と言われることが多い。
特にこの『秘密のかけら』のストーリーは、過去の悲惨な事件を調査する素人探偵モノで、
あの暗く、救いのない『スウィートヒアアフター』とよく似たプロットなのだ。
ところが、
なんと、『秘密のかけら』は上映中、最後まで観客は笑いっぱなしのエロチック・エンターティンメントだったのだ!
笑いのキモはアリソン・ローマン演じる作家の尻軽ぶり。
ヒロインのアリソン・ローマンは26歳なのに幼すぎるルックスなので、『マッチスティックマン』では、ニコラス・ケイジの中学生の娘を演じていたが、この『秘密のかけら』でも、ヒロインの小学生時代を自分で演じている!
しかも、すぐに男と寝てしまうし、おまけにLSDでラリって「不思議の国のアリス」とレズってしまう(音楽はもちろん『ホワイト・ラビット』!)
エゴヤンはロリコンである。
カソリックの女子高生の制服で踊るストリッパーを題材にした『エキゾティカ』、父と女子高校生の娘の近親相姦を描いた『スウィート ヒアアフター』、少女連続殺人鬼を主人公にした『フェリシティの旅』で、性描写、特に未成年のそれに厳しいアメリカを苛立たせてきたが、この『秘密のかけら』はとうとうMPAA(アメリカの映倫)からNC17(成人指定)を食らってしまった。
しかし、問題になったのはアリソン・ローマンのロリエロではなかった。
最後に明らかになる事件の真相が、あっと驚くセックス・シーンなのだ。
これにMPAAが怒ったというが、観客は大爆笑だった。
上映前にトロント市長が「ここではアメリカでは許されないシーンもノーカットでお見せできることを誇りに思います!」と挨拶して喝采を浴びていた。