トロント映画祭⑤ハリケーン・オフェーリア
朝から『ウォレス&グロミット』の取材。
監督のニック・パークとヒロインの声を演じるヘレナ・ボナム・カーターのインタビュー。
ヘレナ・ボナム・カーターは旦那のティム・バートンの『コープス・ブライド』の声もやってるのですっかり声優みたいなことになっている。
バートンは息子に夢中で夫婦円満だそうです。
ニック・パークは本物のウォレスを持ってきていて、触らせてくれた。
オイラの指紋がウォレスの体の表面に残った!
その後すぐに『秘密のかけら』の取材に直行。
ケヴィン・ベーコンは変な役ばかり演じる俳優になってしまった。
『スリーパーズ』では少年院で少年時代のブラッド・ピットにイタズラする看守。
『インビジブル』では痴漢透明人間。
『ワイルド・シングス』ではマット・ディロンと恋仲のゲイ。
『ウッドマン』では幼女にイタズラした過去があるためにミーガン法で監視され更正できない男。
そして、この『秘密のかけら』では……。言えねえ、言えねえ、もう言えねえ(三日月刑事に尋問される千田満五郎風)。
アトム・エゴヤンは「いやあ、僕の映画で観客があんなに笑うのを見たのは初めてだ。笑わせるのって楽しいね」とコメディ演出がすっかり気に入ったようだった。
そのインタビューが終わるとすぐにトロント空港にダッシュ。
NYで急遽、明日の朝からデヴィッド・クローネンバーグの新作『ヒストリー・オブ・バイオレンス』の取材ができることになったからだ。
なんとか間に合って飛行機に乗るが……動かない。
動かない。
「ハリケーン・オフェーリアがNYに向かって北上中です。NYの着陸許可が出ません」
そのまま3時間飛行機に閉じ込められた。
オイラの席はエコノミーのいちばん前。
すぐ前はファーストクラスだ。
真っ青な顔で添乗員と話している女の人に見覚えがある。
あ、ローラ・リニーだ。
『愛についてのキンゼイ・レポート』でキンゼイの奥さんを演じてアカデミー賞候補になった女優さんだ。
何か相当、切羽詰った表情だ。
結局、NY行きの飛行機は全便欠航になった。
トロントに一泊して、明日朝6時の便でNYに飛ばなきゃならない。
ローラ・リニーはバゲッジ・クレイムから吐き出されたバッグを掴むとどこかにダッシュして行った。