ナポレオン・ダイナマイト

TomoMachi2004-09-22

今年の6月に公開されてから今まで記録的なロングランを続けるナポレオン・ダイナマイトという映画がある。
製作費わずか40万ドルのこの映画はすでにアメリカだけで3400万ドルも稼ぎ出した。

草原と牛しかいないアイダホのド田舎に住むナポレオン・ダイナマイトという高校生の物語。
ナポレオンはトッド・ソロンズを百倍どうしようもなくした感じ、『アメリカン・スプレンダー』の真性オタク男トビーを若くしたような少年。
いつも口をだらしなく開け、何かしゃべる時は目を閉じ、走るときはひじが体から離れない(わかる?)。Tシャツをいつもズボンの中に入れている。
こんなナポレオンだから、当然いつも学校でイジメられ、一緒にランチを食べる友達もいない。
メガネだけど勉強ができるわけでもなく、授業中はいつも高校生なのにライガー(ライオンと虎の中間)とかいった空想の動物の落書きをしている。その絵も恐ろしくヘタクソ。


ナポレオンの家族はアウトドア・スポーツ好きの祖母と、兄のキップ。
兄キップはナポレオンに輪をかけたヘナチョコで、小倉一郎に女性ホルモンを注射したような貧弱な男で無職。セクシーでグラマーな美女と文通していると言い張るが妄想に決まってる。


そんなダイナマイト家に叔父さんがやってくる。
叔父は中年になるのに職も家族もなく、キャンピングカーで暮らしている。
筋肉だけが取り柄で、自分がフットボールを投げる姿をビデオに撮って自分で観るのが趣味。
フットボール選手になってればモテモテだったのになあ、といつも夢見てる叔父さんは、信販売でタイムマシンが売られているのを知る。
「これで過去に戻ってアメフト選手になるんだ」と、タイムマシンを買う金を貯めるため、兄キップを巻き込んでインチキなセールスマンを始める。


一方、ナポレオンの高校にたった一人のメキシコ人ペドロが転校してくる。友達のいないナポレオンと友達になるが、そのペドロがモテたくて生徒会長に立候補する。


こう書くとオタク少年を主人公にした『ルーカスの青春メモリー』とか、その手の爽やか青春コメディを想像するだろうが、この『ナポレオン・ダイナマイト』は藤原章の『ラッパー慕情』に果てしなく近い。特に中年すぎてフットボール選手を夢見てタイムマシンを買おうとする叔父さんの部分は藤原章がシナリオ書いたとしか思えない。


全編、爆笑というより失笑の脱力ギャグの連発で、とにかくくだらない。
ものすごく頭が悪い。
どのくらい頭が悪いかというと、たとえばナポレオンは救世軍のバザーで「サイ」を見つけてズボンに差してニヤリとする。
生徒会長選挙に乗り出すと、頭の中に「特攻野郎Aチーム」のテーマが鳴り響く。
そう、オイラと同じくらいバカなのだ。
でも、これが40億円近く儲けちまったんだぜ!