大事件/ブレイキング・ニュース

TomoMachi2004-09-23

最近、ジョニー・トーづいているので『大事件/ブレイキング・ニュース』。


開巻いきなり7分間ワンカットの大銃撃戦で観客の度肝を抜く。
永瀬正敏似のリッチー・レン率いる銀行強盗のアジトを、布袋寅泰似のニック・チョン率いるCID(重犯罪特捜班)が張り込みしている。
逃げ出そうとした強盗団と銃撃戦が始まる。
カメラはステディカム長回ししていたかと思うと急に視点が上昇して俯瞰になり(カメラマンがクレーンに乗ったのだ)、また地面に降りて走り出し、また上昇する。
突っ込んできた警察のバンを強盗団が蜂の巣にして、それを奪って逃亡し、逃げ際にRPGをぶっ放して警察の自動車を吹き飛ばす。
ここまで一切カットつなぎなし。
これは凄い。


強盗団は命乞いする警官を射殺して逃亡。これがTVで放送され、警察の威信は地に落ちる。
警察の女指揮官ケリー・チャンは逆に警察から映像をどんどん流すことでイメージアップを図ろうとする。


CIDに突き止められた4人の強盗団は高層アパートに篭城する。
しかし、そのアパートにはヤクザの殺し屋も潜伏していた。
迷路のようなアパートでCIDとPTU(機動部隊)と殺し屋と強盗団の手榴弾やプロパンガスを駆使しての攻防戦が始まる。ここからラストまで時間の進行はほぼリアルタイムだ。


ケリー・チャンはPTU(機動部隊)全隊員の体に小型カメラを装着し、強盗団との戦いを迫真の映像でTV中継する。
これはブッシュ政権プロパガンダとしてイラク戦争をショーアップしたアメリカのFOXニュース・チャンネルにヒントを得たのだろうか?
警察に対抗して篭城した犯人側はパソコンとカメラ付携帯電話で警察の失態や人質の様子をマスコミに流し、メディア戦争の様を呈し、警察側と犯人側の視点がスプリット・スクリーンで立体的に描かれる。


『大事件ブレイキング・ニュース』は前半10分にほとんど状況説明なしの銃撃戦、その後の10分で状況設定をして、残り一時間以上リアルタイムで攻防戦、という珍しい構成の映画で、登場人物の過去などの描写をバッサリ切り捨てて、ジョニー・トーはひたすら超絶技巧の映像と編集テクニックを披露することに専念している。
 観ていて思い出したのは、シドニー・ルメットの『ショーン・コネリー盗聴作戦』である。あれよりはるかに面白いが。


何よりも恐ろしいのは、このレベルの作品を年に二本も三本も作っているジョニー・トーだ。三池崇史あやうし!