「トロイ」のブラピが金髪なのは少女漫画的美学か

TomoMachi2004-06-18

ギリシャ彫刻のような」
そう形容されることが多いブラッド・ピットに映画『トロイ』のアキレウス役をやらせたのは商売としては正しい選択だ。でも、学術的、政治的にはどうか?


というのも現在のギリシャ人の大半は黒い縮れ毛に黒い瞳ばかりなので、
古代ギリシャに果たしてブラピのような金髪で青い目の北欧系白人がいたかどうかが常に論争の的になってきたからだ。


ギリシャ彫刻には色が残っていないが、遺跡から発掘される陶器に描かれた古代ギリシャ人は黒い縮れ毛に黒い瞳、それに褐色の肌で、現在のギリシャ人と変わりがない。
たとえばこのサイトは古代ギリシャ人の人種に関する学術的考察。
http://www.geocities.com/dienekesp/hellenes.html


ところが「古代ギリシャ人は金髪碧眼に白い肌だった!」と言い張る連中がいる。白人至上主義者たちである。彼らにとってヨーロッパ文明の源である古代ギリシャは白人のものでなければならないのだ。


ナチス・ドイツは「古代ギリシャ人は金髪碧眼だったが、劣等人種と混血して現在のようなギリシャ人になった。正統な古代ギリシャ人の子孫は我われドイツ人だ」と主張し、そのためにベルリン・オリンピックを開催した。そしてついにはギリシャを侵略、占領してしまったのである。
また、ナチスは「第三帝国」を自称してローマ帝国の後継者であると勝手に主張した。
ドイツ第一帝国とはゲルマン人がローマの名前を無理やり引き継いだ神聖ローマ帝国である。
5世紀まで「野蛮人」だったというコンプレックスを抱えたゲルマン人たちは、千五百年以上にわたってギリシャ・ローマの歴史を奪おうと奮闘してきたのだ。


ナチが滅んだ今でも白人優位主義者たちは「古代ギシリャ人金髪碧眼説」を信じている。
たとえばこのサイトはそういうことを主張しているネオナチのサイト。
http://www.stormfront.org/


連中が根拠としているのがアキレウスだ。
ホメロスの『イリアス』にはアキレウスの髪と目が「明るい色」だという描写があるからだ。しかしギリシャ人は「これは必ずしも金髪碧眼という意味ではない。遺跡に描かれたアキレウスの髪は茶色だ」と反論している。そもそも神話の登場人物が一人くらい金髪だからって、祖先の遺産を横取りされてはたまらない。日本の少女漫画を見た白人が「みんな金髪だから少女漫画家は白人だった」と言うようなものだ。


以上のような意味で『トロイ』はギリシア人にとって愉快な映画ではないはずだ。監督のヴォルフガング・ペーターゼンはドイツ人だしな。
ちなみにブラピの奥さんジェニファー・アニストンは本名アナスタサキスで、ギリシア育ちのギリシア系である。


日本人もナチのことは笑えない。江戸時代の日本人の8割は百姓だったのに、明治維新後に家系図を買ったりして、今では誰もが「オレは侍だ」とか言ってるんだから。