このマンガを翻訳してました

TomoMachi2004-03-24

えー、二月に翻訳していた本というのは、これです。
ブーンドックス」Boondocks(田舎者)というアメリカの新聞の4コマ・マンガの連載4年分のベスト集成本。
もう原稿は全部入れてあるので、もうすぐ幻冬舎から発売されるはずです。

ブーンドックス』の主人公は白人ばかりの郊外住宅地で暮らす黒人の小学生ヒューイ。
可愛いアニメ顔にもかかわらず、ヒューイは決して笑わない。
その仏頂面には黒人として生きる苦悩が滲み出ている。
学校に行けば「黒人の歴史」の授業で白人教師が「ピーナツバターはアフリカ系の人が発明したんですよ」と毎年同じネタをふってくる。
隣の席の白人少年はヒューイがちょっと睨んだだけで「お金ならあげるから命だけは助けて」と勝手にビビる。
後の席のヒップホップかぶれの白人少女シンディはインチキな黒人なまりで「拳銃不法所持で逮捕されたパフ・ダディのために署名してよ、メーン」とつついてくる(パフダディがジェニロペとつきあっていた頃の話)。
「白人だましの音楽でアブク銭稼いだパフィにはいいお仕置きさ」と答えると「あんた、それでもブラザーなの?」お前に言われたかない。
「オイラも黒人だけど、パフ・ダディのム所行きには賛成だ」と言うラスタな美少年シーザーとは気の合う仲間だ。
でもシーザーの本音は「そしたらジェニロペが僕に回ってくるかもしれないじゃん」
シーザーはいつもこの調子。最近のサンフランシスコ市がゲイのカップルに結婚証明書を発行したという時事ネタでもそう。
http://us.news1.yimg.com/us.yimg.com/p/uc/20040313/lbo040313.gif
ヒューイ「今朝、うちのじいちゃんが僕らにゲイ結婚のことを説明しようとしたんだけど、うまくいかなかったよ」
シーザー「ゲイ結婚の何が問題なのかわからないね。僕は全面的に賛成だよ」
ヒューイ「ほんとに?」
シーザー「もちろん!」
シーザー「だってそのぶん、僕に女の子が回ってくるじゃん!」


ヒューイのGFのジャスミンは可愛くて優しい女の子だけどママが白人で、自分は黒人じゃないと信じていて、アフロヘアを「くせっ毛よ!」と言い張る。
弟はギャングスタ・ラップに洗脳されたライリー。「将来、ラッパーか麻薬の売人として成功したら車はベンツとベントレーのどっちがいい?」とネボケたことばかりぬかしてる。
世間を見渡してもヒューイをイラつかせることばかり。たとえばアメコミ『Xメン』の黒人ヒロイン、ストームのストレートな銀髪に我慢ならない。
「それは白人コンプレックスか? アフロにしろ!」
スター・ウォーズ/エピソード1』は当然許せない。「ジャージャー・ビンクスは露骨に黒人をバカにしたキャラだ。ルーカスを断罪せよ!」ヒューイがネットで煽ったら、それを読んだバカが本当にルーカスを蹴っ飛ばして大騒ぎ。


アフリカ系の尊厳のために孤独な闘いを続けるヒューイだが、作者のアーロン・マッグルーダーがアニオタなので絵柄はキュート。
「可愛いキャラだからキツイこと言っても許されるのさ」というのがアーロンの戦略だが、同時多発テロ以降、大変なことになっていくのである(続く)。