Sportivaの連載用に『コーチ・カーター』について書く。
オイラの地元ベイエリアでも最悪に治安の悪いリッチモンドで1999年にあった実話の映画化。
リッチモンド高校は、バスケットが強かったが、成績は最低。生徒の半数が卒業前に中退してしまう有様で、そのほとんどがギャングかホームレスになってしまう。
なにしろ大学進学者1人に対して80人が犯罪で刑務所に行くという町なのだ。
その高校の卒業生でバスケの名選手だったケン・カーターが帰ってくる。
カーターはスポーツ用品店の経営者として成功したビジネスマン。
バスケ部のコーチを引き受ける条件としてカーターは二十か条のルールを並べた契約書に選手と学校と親にサインさせた。それはバスケとは直接無関係の内容だった。
「選手はGPA2・3を維持すること」。GPAは学力の平均点で4点が満点である。
「選手は絶対に授業をサボらない」
「教室の一番前の席に座る」
「授業以外に週に十時間は勉強する」エトセトラ。
この条項を破ったら腕立て伏せ千回。
そしてGPAが2・3に達しない部員が一人でもいれば試合も含めて部活は一切中止する。
アメリカの高校ではたいてい体育会の選手は授業はサボり放題だから選手と親は猛反発して「プロになるんだから勉強なんてどうでもいい」と叫んだ。彼らにカーターは言った。
「高校のスポーツ選手で最終的にプロになれるのは50万人に一人だ。プロスポーツ業界で働く者は全米でたった5千人しかいない。そんな可能性の低い夢にすべてを賭けて、子供たちの将来を潰す気か?」
実際、アメリカでは毎年何万人もの「高校の運動部のヒーロー」が、プロの夢破れて、カラッポの頭と、ステロイドでボロボロの体と、高校の時ちやほやされた思い出だけを抱えて、低賃金労働者になるか、アル中になるか、自殺しているのだ。
でも、この映画の見所はなんといってもアル・パシーノ、丹波哲郎と並ぶ「世界三大演説俳優」サミュエル・L・ジャクソンの二時間半ノンストップ説教。
「パルプ・フィクション」のあの説教が二時間以上続くのだからマニアにとっては「ヌキどころだけ集めたAV」みたいなものだ。
そうでない人は「ディープブルー」みたいにジャクソンがサメに食われるのが待ち遠しくなるだけだ。