アメリカ映画を理解するために必見のDVD

TomoMachi2004-10-13

アメリカン・ニューシネマ/反逆と再生のハリウッド史』というドキュメンタリー映画のDVDの字幕監修をやりました。
11月26日、ナウオンメディアから3,990円で発売されます。
http://www.nowondvd.net/products/decade/index.html

1968年から78年にかけて、ハリウッド映画が最も実験的で過激だった時代を描いたドキュメンタリーで、原題A Decade Under The Influenceは、Driving Under The Influence(酒酔い運転)のシャレで、「ドラッグでラリっていた十年間」という意味と「カウンター・カルチャーに感化influencedされた十年間」のダブル・ミーニングがある。


 要するに60年代末にハリウッドの映画会社のすべてが倒産状態になり、大企業に買収される過程で撮影所システムが崩壊したせいで、それまで身内しか入れなかった映画界に、ヨーロッパや日本の実験的映画の影響を受けた映画学校出の若手監督たちが入り込み、綺麗なセットから現実の風景に飛び出し、ハリウッド風ハッピーエンディングも拒否し、現実逃避のファンタジーではなく、現実をフィルムで切り取って観客に投げつけるような挑戦的な映画、観客に答えを委ねる「疑問形の映画」を作った。


 入ってきた監督とはコッポラ、フリードキン、スコセッシ、デパルマ、アルトマン、ミリアス、ルーカス、スピルバーグなどで、生み出された作品は『イージーライダー』『MASH』『ゴッドファーザー』『フレンチコネクション』『エクソシスト』『少年は虹を渡る』『ラストショー』『チャイナタウン』『地獄の黙示録』『タクシードライバー』『狼たちの午後』『真夜中のカウボーイ』などだ。
 

 ハリウッドの伝統的な撮影所システムが崩壊し、コングロマリット経営の電通マーケティングによるメディア産業へと移行する狭間のわずか十年間の無法時代に狂い咲いたセックスと暴力とドラッグとロックンロールな作品群。
 このDVDは、それが生まれた理由と、それが終わった理由を100分でまとめてあり、アメリカ映画をレトリックだけの印象批評ではなく、歴史とシステムの面から実証的に理解したいと思う人にとっては必見です。
 
 監督は『ブロウ』のテッド・デミ。彼にとってはこれが遺作となりました。