白髪頭のトム・クルーズ(42歳)

TomoMachi2004-08-22

トム・クルーズの『コラテラル』を観た。


ロサンジェルスのタクシー運転手(ジェイミー・フォックス)が、たまたま乗せた白髪混じりの中年男(トム・クルーズ)に、一晩かけて5箇所を回ってくれたら7万円かなんか払おう、と言われる。
しかし、トムクルは実は殺し屋で、一晩に5人の標的を殺そうとしていた。
それを目撃したフォックスは逃げられなくなる……。


まあ、とにかく穴だらけのプロットなので、そこを気にしだすと止まらなくなる。
タクシーよりもハイヤーを雇ったほうがいいし、そもそもレンタカー借りて自分で運転したほうがいい。
途中でターゲットを知ったFBIがターゲットの命を守ろうともしないのもおかしいし……。


まあいいや。
この映画はそういうリアルなサスペンス映画として観るのは間違いなのだろう。
これは寓話なのだ。


タクシー運転手として貯めた金でリムジン会社を始めるという夢を持ちながら、
その実、自分では一生そんな金など貯まらないとわかっていて、
でも、その事実を直視しないでダラダラと日銭を稼ぎ、
結婚もせず、家庭も持たず、大人の男としての責任も取らず(いい年をして母親と親密である)、
30歳すぎてしまった主人公が、
金のためらなら人殺しも厭わないトムクルから実存主義的な問いかけを受ける。
トムクルは現実の人間ではなく、フォックスと正反対の人格の象徴であり、同時にフォックスの潜在意識に隠されたダークサイド、ドッペルゲンガーである。
彼と出会うことでフォックスは現実から逃げてきた人生に気づき、戦いを始めるのだ。
つまりファウストメフィストフェレスの話ですな。
だからこれは舞台でフォックスとトムクルの二人芝居としてミニマムに演ってもよかったかも。


同じネタでは『ヒッチャー』が凄まじかったけど(特にパトカーのクラッシュやジェニファー・ジェイソン・リーが惨殺される場面)、この映画ではやっぱり42歳という実年齢にふさわしい白髪頭で頑張るトムクルを見てあげるべきでしょう。
ちなみに彼の生年月日は1962年7月4日。オイラと数時間違いの生まれである。