『キル・ビル』はラブ・ストーリーではない

TomoMachi2004-03-20

GAGAには悪いけど、『キル・ビルVol.2』はラブ・ストーリーではない。


なぜなら、これがラブ・ストーリーとなると、『子連れ狼Shogun Assassinも『ロード・トゥ・パーディション』もラブ・ストーリーになってしまうからだ。


この三つは同じ物語である。
主人公は殺しの達人。
ある事件をきっかけに、殺しの達人は、愛する配偶者を殺され、自分も子供も殺されそうになるが、運よく生き延びる。
かつてのボスを敵に回して復讐の旅が始まる。
しかし、彼を追うボスは、実は彼を誰よりも、我が子のように愛していた。
そして……。


去年の8月、タランティーノに会った時、彼が『ロード・トゥ・パーディション』をボロカスに言っていた理由が遅まきながらわかった。
要するに「『子連れ狼』はオレにやらせろ!」という意味だったのだ。


ロード・トゥ・パーディション』Road to Perdition(地獄への道)という題名は「冥府魔道」の英訳である。
原作者マックス・アラン・コリンズはある日、DCコミックスの編集者アンディ・ヘルファーから『子連れ狼』の英訳(ダークホース刊)を手渡され、いっきに読み通すと、すぐにそれを禁酒法時代のギャングの殺し屋の物語に書き換えて劇画にした。
ちゃんと巻頭には小池一夫の名前が入り、アンディ・ヘルファーもちゃんと小池一夫の元に献本した。
しかし映画化にあたっては小池氏には何の挨拶もなかったそうだ。
しかし、トム・ハンクスのガン・アクションは日本刀の居合いにヒントを得ているし、
ポール・ニューマン演じるアイリッシュ・マフィアのボスが
トム・ハンクス演じる殺し屋を実の息子以上に愛し、またハンクスの息子を孫のように愛し、
結局は自分から殺されていく結末は、『子連れ狼』の最終回の柳生烈堂そのものなのだ。


キル・ビル』の場合、ブライドとビルの間に男女の関係があって、自分の子供を生ませているのでややこしいが、ビルにとってブライドは「女」というより、精根込めて育てた大事な娘なのだ。
ちなみにデヴィッド・キャラダインはヒッピーとして有名だが、
ユマ・サーマンの両親もヒッピーである。


そう考えると『キル・ビル』がなぜ現代なのにみんな日本刀を持っている世界なのかがわかる。『子連れ狼』だからだ。


キル・ビル』にはちょっと『柳生一族の陰謀』も入っていて、柳生但馬守と十兵衛の親子関係もビルとブライドに影響している。
ダリル・ハンナが眼帯して日本刀構えるのは十兵衛がヒントなんだな。


とにかく、父と子、孫の愛憎を描くドラマなのだ。
それをラブ・ストーリーと呼ぶと、『柳生一族の陰謀』も父子のラブストーリーになっちまう。
千葉ちゃんと錦ちゃんの親子ラブなんて!