『マッスル・モンク』は「幻の湖」香港版

TomoMachi2004-03-16

チャイナタウンでメシ食いついでに、『無間道』でハリウッドからも注目されているアンディ・ラウ主演、ジョニー・トー監督の『マッスル・モンク』Running On KarmaのVCDを買った。



ご覧のようにアンディ・ラウは別人のように鍛え上げている。
わけがなくて、これはすごくよくできたボディスーツである。


たぶん『ハルク』と『スパイダーマン』の香港製バッタモンとして企画されたのだろう。
アンディ・ラウはハルクみたいなパワーで、どんな小さなカバンにでも入ってしまうヨガ行者やヤモリ男などの怪人を次々に退治する。
しかし、どこかが狂っている。


ラウは金持ち女相手に男娼をして暮らしている真夜中のカウボーイである。
冒頭いきなり筋肉ラウがストリップ・バーで特出しして逮捕されそうになり、チェイスが始まる。
そして、手足の関節が自由にはずせるヨガ行者と戦う警察の特殊部隊に巻き込まれる。
ラウはこの間、ずっとフルチンで、このへん、完全にドタバタ・コメディである。
ラウをわいせつ物陳列罪で逮捕する女刑事は声が久本雅美セシリア・チャン
ラウは彼女に恋心を抱くのだが、セシリアを見るたびになぜか中国人を虐殺する日本兵の姿がオーバーラップする。
その後も、ラウがセシリアに見とれるたびに、ソフトフォーカスで、モヤモヤ〜っと、鬼畜日本兵が笑いながら日本刀で女の首を切り落としたり、赤ん坊を銃剣で刺し殺す姿が浮かぶ。


何? これ?
日帝萌え?


ではなくて、日本兵はセシリアの前世だという。
なぜ、ラウにそれが見えるかというと、本当は少林寺の仏僧だからだという。
このへんから何の映画だかわからなくなってくる。


この映画は最初に、インドのヨガ行者が殺人事件を起こして、警察に連行される場面がある。
ヨガ行者はパトカーから逃亡しようと暴れた時に刑事部長の可愛がっている部下を車からはじき出してしまう。その部下はなぜか猛スピードで路上を滑走して別の車に突っ込んで意味なくすさまじい死を遂げる。
復讐に燃える刑事部長はヨガ行者を殺そうとしてショットガンを乱射し、
なぜかヨガ行者をかくまっていた女性の腕を散弾で撃ちちぎってしまう。
腕がもげた女性にセシリアが「なぜ、あの男をかくまってたの?」と聞く。
女性は応える。「わからないけど、なぜか昔から知っていたような気がして」
ところが、その後、女性も刑事部長も、ヨガ行者も一切画面に出てこない!
ヨガ行者の最初の殺人の動機も、こいつが何者なのかも最後までわからない!


事件の行方を追わないまま、ラウとセシリアのラブコメディが展開する。
ラウはボディビル大会に優勝したりする。
セシリアにラウは告げる。
「君の前世は残虐な日本兵だったんだ」
セシリアは尋ねる。
「その日本兵、カッコいいの?」


セシリアは前世を克服しようと山に入る。
しかし行方不明になり、持っていたビデオカメラだけが発見される。
それを再生すると、山に潜んでいるうちに野生化した連続殺人犯(!)にセシリアが襲われて生首を切断される現場が映っていた!


……すいません、このVCD、壊れてるみたいなんですけど。
いきなり『食人族』か『ブレア・ウィッチ』が入ってるんですけど……。


で、ラウはセシリアの生首を拾って号泣(さっきまでラブコメだったのに…)
そして殺人犯を求めて山に入る。
そして字幕。
「5年後」
山で5年間、殺人犯を探すうちに自らも野生化したラウ。
おいおい!
で、クライマックスは観客をおいてきぼりにしたまま、「因果」をめぐる仏教的考察が延々と駆け巡る。
あのさー、最初はフルチン・コメディだったじゃん!
とか言いながら見てると、今度はいきなり近未来SFになりやがんの。
見てるこっちの脳みそが破裂して片付けるのが大変だった。


これはナガブチの『ウォータームーン』、橋本忍の『幻の湖』と並ぶトンデモ仏教映画!


ハイランダー2』が好きな人にお勧め。