アメリカで出る本のために「萌え」という言葉の起源、正確な語義、歴史について書いて欲しいと依頼された。
思えばオイラが1989年に『おたくの本』を作ってからもう15年。
あの時、オイラはまだ26歳で、別冊宝島に配属されたばかりで、
部署では一番年下で発言力がなくて、企画を通すまでが大変だった。
まず「おたく」という言葉を誰も知らなかった。
編集長も営業部もタイトルを変えろと迫った。
「マニア」とか「コレクター」にしろというのだ。
それは違う! といくら説明しても通じない。
「いい年こいてアニメを見ている奴? そんなのいるのか?」
先輩の梨本さんの支援で最後までタイトルを守りとおして発売された『おたくの本』はオイラの作った本で最初に15万部を超えたベストセラーになった。
あの本で「おたく」という言葉を知った新聞やテレビからインタビューされて「おたくとは」を説明させられたが、あまりにもわかってくれないので(宮崎勤事件があったのでロリコンと完全に同一視する人も多かった)、面倒くさくなって、命名者の中森明夫氏のところに行って下さい、と言ったり、こう言ったりもした。
「要するに僕のような人ですよ」
つまり89年の「おたく」は当事者だったから何でも知っていたがのだが、今回の「萌え」の場合は違う。
まず「萌え」という言葉が日本で出てきたのはオイラがアメリカに来た後なので、状況がわからない。
それに、年のせいか、オイラはもう30歳以上の女性にしか性的な魅力を感じず、20代以下は娘と同じようにしか思えないのだ。
それを柳下くんに言ったら、こう言われた。
「それ、“萌え”ですよ。性欲なしに女の子が可愛いと思うってのは」
えー、そうなの?
まあ、「萌え」についてはもっと研究してみなきゃ。