聖灰水曜日。
カソリックの人は日々の罪を反省する日。
『パッション』The Passion of The Christの封切り日。
この映画に関してしゃべって欲しいと言われてTBSラジオの「ストリーム」という番組の生放送に電話で出演した。
でも、生放送だから肝心のことを言う前に時間が切れちまった!
ということで言い損なったことをダラダラ書く。
この映画はメル・ギブソンが自分の金で作って監督した「個人映画」で、
配給会社もニューマーケットという、『メメント』とか『ドニー・ダーコ』とかのインディペンデントの小品しか扱ったことがない新興の会社だった。
ところが、いろいろ話題になったことで、最終的に全米で5千以上のスクリーンで拡大公開されることになった。
メルギブはこの映画を、当時イスラエルのユダヤ人が話していたとされるアラム語と、支配していたローマ人のラテン語だけで撮影し、英語字幕をつけた。
その理由は、今までで最も真実に近いキリスト処刑を描くため。
この「真実に近い」という部分が最大の売りである。
内容はキリストが処刑される12時間を描いており、ほとんどが拷問と磔刑の再現。
今までのキリスト映画では画面の外だった鞭打ちで裂ける肉、貫通する釘を直接見せている。それも延々と、というかそればっかり。
これもメルギブに言わせると「実際にキリストがされた事実を見て欲しい」という理由だ。
「真実」「事実」、メルギブの動機はそれだ。
で、この「真実」のキリスト映画が問題になっているのは、キリストを殺した犯人はユダヤ人だと主張している点。
処刑を行ったローマ政府はキリストはどうでもよかったが、
キリストは救世主ではないとするユダヤ教徒がキリストの処刑を求めた。
映画では、やる気のないローマの司政官ピラトーに、ユダヤ教徒の司祭がガミガミとキリスト殺せとケツを叩き、
十字架を背負ったキリストがゴルゴダに向かう間、ユダヤの群集が罵り、嘲笑い、石を投げる光景が延々と描かれる。というかそればっか。
ローマ法王はこの映画に「真実どおりだ」とお墨付きを与えた。
で、劇場公開されてどうなったか。
キリスト教徒にとって反省の日である聖灰水曜日、キリストの痛みを知ろうとする善男善女が劇場に殺到し、映画は記録的な大ヒットになった。
そしてデンバーのある教会の看板には以下のような字が躍った。
「イエス様を殺したのはユダヤだ!」
以下続きの予告。
・メルギブの父親、ラジオで「ユダヤ虐殺はウソっぱち」「ユダヤは世界征服を企んでる」と煽りまくる!
・メルギブ、「パッション」商法で稼ぎまくり!
・で、「パッション」は本当に「真実」なのか?
・メルギブの陰謀とは?