週刊文春でバックファイア効果について
Backfire Effect バックファイア(逆発)効果 自分が信じるものを否定する証拠を突きつけられると、それを拒絶し、さらに盲信するようになる心理
1964年の映画『博士の異常な愛情』で、アメリカ空軍のリッパー将軍が独断でソ連に向けて水爆を積んだ爆撃機を出撃させる。将軍は、世界核戦争を起こす理由をこう説明する。
「水道水にフッ素を入れるようになったのは、いつからか知っているか?」
アメリカでは6割以上の水道水に、虫歯予防のために微量のフッ素が混入されている。始まったのは第二次世界大戦直後の1946年だ。
「共産主義者の陰謀が始まった年だ」リッパー将軍は言う。「我々は知らないうちに得体のしれない物質を飲まされている。それがアカどものやり方だ」
米ソ冷戦時代、共産主義者がアメリカを内部から侵略を開始しているという疑心暗鬼が広がり、マッカーシズムという魔女狩りに発展した。フッ素陰謀論もその頃生まれた。
税金が嫌でイギリスから独立したアメリカでは、国に何かを取られるのも国かもらうのも嫌いだ。国民健康保険をはじめ、あらゆる福祉が「共産主義的」と罵倒される。水道水のフッ素だって同じだ。
「ナチはフッ素をユダヤ人に盛った。フッ素は人間の意志を失わせる。政府はそれで国民をコントロールしようとしている」という説が広まった。もちろん全部デマ。フッ素にそんな効果はない。でも、水に何か入っていると言われるだけで人は不安になり、自分の不安と結びつける。リッパー将軍がフッ素の陰謀を感じたのはセックスの最中だったという。
「空っぽになった感じがした。精気を奪われた。昔はあんなに元気だったのに!」
オレがEDになったのもアカのせいだ!というわけですね。
フッ素陰謀論は、米ソ冷戦が終わって21世紀になっても消えない。毎年一冊は新しい本が出ている。中身は50年前から同じだが。
(続きは週刊文春で)
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