今週金曜日夜の「松嶋×町山 未公開映画を観るTV」、
大晦日は夜11時から、『ザ・ベスト・ワースト・ムービー』をお送りします!
1990年公開のイタリア製Z級ホラー映画『トロル2』が20年後に「最低すぎて最高」とカルト映画になり、
その人気に出演者や監督が振り回されていく、泣いて笑えるドキュメンタリーです!
『プラン9・フロム・アウタースペース』という映画がある。
あまりにもヒドいので逆に愛されてカルト・ムービーになり、監督のエド・ウッドの伝記がジョニー・デップ主演で映画化された。
『ザ・ベスト・ワースト・ムービー』は、そんな風にヒドすぎて人気になった映画『トロル2/悪魔の森』(90年)についてのドキュメンタリー映画だ。
まず、80年代にエンパイアというZ級映画会社があった。そこが『トロル』(86年)という、子鬼が出てくるホラー映画を作った。『トロル2』は、その続編として1990年にビデオ発売されたが、もともとは『トロル』とはまるで無関係の『ゴブリン』というイタリア映画だった。
とにかく脚本がヒドイ。ある日、ユタ州の田舎町に家族が旅行にやって来る。すると住人たちが「野菜を喰え〜!」と迫ってくる。で、野菜を喰うと、植物人間になってしまう!
脳死するんじゃなくて、文字通り指先から枝や葉っぱが生えてきて植物になるのだ!
なぜ植物にするかというと、村人たちの正体は人食いゴブリンだったが、野菜しか食べられないベジタリアンのゴブリンなので、人を喰いたいから彼らを野菜にして喰うのだ……って、書いてるこっちのほうが脳死しそうだよ!
しかもスタッフ全員イタリア人で、アメリカ人の俳優たちとコミュニケーションができず、演技はめちゃくちゃ。ホラーなのに笑うしかない。
ところが、『トロル2』が作られて十年以上経過するうちに、「あまりにもヒドすぎて楽しい」という評判が口コミで広がっていった。VHSのビデオがダビングされて、パーティでそれを再生し、「そりゃないだろ!」と突っ込みを入れながらみんなで楽しむ人々が増えていった。
そして、2007年、フィルムが発見され、ニューヨークで上映会が開かれた。全米各地からオタクたちがはるばる遠くから何時間もかけて観に来た。主宰者は『トロル2』に出演した俳優たちも上映会に招待した。
この映画があまりにヒドかったので、出演者たちはこれで俳優をあきらめていた。
お父さん役のジョージ・ハーディは俳優をあきらめ、田舎に帰って歯科医をしていた。そして、彼の子ども役で撮影当時は11歳の子役だったマイケル・ステフェンソンもそうだった。
ところが、二人は『トロル2』に熱狂するオタクたちを観て、「自分はもういちど映画界に戻れるかも……」と大カン違いをしてしまう……。