http://d.hatena.ne.jp/kensyouhan/20081004/1223091287
またしても唐沢俊一検証blogからです。
唐沢俊一の最新刊『トンデモ事件簿』P.164より
話をIRAに戻すと、この団体は女王陛下のイングランドに楯突く凶悪なテロ組織なのだが、しかしイングランドに長年虐げられてきたアイルランドの独立を目指す組織なので賛同者も多く、あの“女王陛下の007”ことショーン・コネリーも、この団体には多額の寄付をしている(だからコネリーはいまだにサーの称号がもらえないでいる)。
これっぽちの短い文章がもう間違いだらけだ。というか、正しい部分がほとんどない。
1 IRAはアイルランド独立を目指す組織ではない
かつてはそうだったけど、アイルランドはすでに1921年に連合王国いわゆるイギリスから独立しちゃってるから、もう、「目指し」たくても目指せないんだよね!
もし、アイルランドが既に独立国家であることを知っていたら、上記のような文章は書けないだろう。
現在のIRAは、イギリス領である北アイルランドをアイルランドと統合しようとしている組織である。
雑学はいい加減なところも面白さだと唐沢は自己弁護しているが、これに関しては雑学ではなく一般常識の問題だ。
2 ショーン・コネリーが支援していたのはアイルランドではなく、スコットランド独立運動だった。
そして、スコットランドはすでに1999年に独自の議会を持ち、完全な分離独立ではないもののかなりの自治権を勝ち取った。つまり独立運動は9年も前にとりあえずの勝利を得たのだ。映画『ブレイブハート』公開でスコットランド独立が世界の注目を集めていたこともあり、日本のマスコミでも大きく報道された。
3 ショーン・コネリーは8年も前にナイトの称号を与えられ、それ以来ずっと「サー」と呼ばれ続けている。 コネリーが「敵」である女王から称号を受けることにはスコットランド独立派が反発し、これもまた日本でも報道された。
コネリーは、2000年に女王からナイトを授けられる式にスコットランドの正装で現れた(上の写真)。背後の旗はスコットランドの国旗だ。
唐沢の本は99年以前に出版されたものではない。コネリーがナイトの称号を受けてから8年も後の今年9月20日発売の本なのだ。
その他
・もし、唐沢がIRAを「アイルランド独立を目指す組織」だと思っているなら、同時にそれを「凶悪なテロ組織」と呼ぶのはあまりにも雑駁である。それならアメリカ独立戦争を戦ったジョージ・ワシントンたちも凶悪なテロ組織か?
・ショーン・コネリーは「女王陛下の007」とは呼ばれていない。
「女王陛下の007」はジョージ・レーゼンビー主演である。
・「女王陛下のイングランド」と書かれているが、北アイルランドを領有しているのはイングランドではなくグレートブリテン連合王国である(イングランドはその一部)。
また、現実に北アイルランドでアイルランド系住民と敵対しているのはスコットランド系住民である。
・「サー」は称号ではなく、ナイトの称号を持つ者への敬称。
などの間違いがあるが、トップの3つだけでも、もう出版物として許されない致命的な間違いである。
しかも、どう読んでも「うっかり」の書き間違いではない。
唐沢の文章を読む限り、彼はショーン・コネリーはアイルランド独立を支援していると信じているうえに、どう考えてもUKの歴史的経緯をまるで知らないとしか思えない。
もちろん、普通の人なら別にこんなこと知らなくてもかまわない。
いや、タレントや物書きや学校の先生でも、この程度の間違いはするだろう。オイラもよくやる。
しかし、博学だの物知りを自称して商売し、他人をやたらとバカ呼ばわりしている唐沢が、こんな間違いを偉そうに講釈垂れているのだから、みっともないことこの上ない。
唐沢はどうしていつものようにネットからパクらなかったのか?
そうすれば盗作かもしれないがマヌケをさらさずにすんだのに。
もう一度言うけど、山本弘さん、と学会たるものが、こんなトンデモ知ったかぶりをいつまでも飼っていることの倫理的正当性はどこにあるんでしょうか?
他のグループならまだしも、と学会は他の出版物の間違いを指摘してきた団体であり、しかも、山本さんご自身も、他の本の間違いを指摘し続けているわけでしょう?
ほんと、きちんと回答して欲しいもんですよ、山本さん。
オイラはバカだが、バカであることを知っているし、公言もしている。自分が利口だと思って他人をバカにしまくるバカよりよっぽどマシだと思うよ。