フランク・ミラーは「イエローバスタード」そっくりの顔してた

TomoMachi2005-04-01

フランク・ミラーにインタビューした時、彼は「私はフリップ・マーロウやハメットのハードボイルドやフィルムノワールに強く影響を受けた」と言った。


記者の一人が突っ込んだ。
「でも、フィルムノワールやハードボイルド小説とは違いますね。そういう物語はたいてい主人公をファムファタールの悪女が陥れるものですが、『シン・シティ』に登場する女性はみんなGolden Heart(美しい心)の持ち主で、悪女は出てきませんね」
彼女は鋭い質問をしたようだけど、実はこの前のインタビューで女優のロザリオ・ドーソンが指摘したことの受け売りだ。
フランク・ミラーは「うん。これは僕のファンタジーなんだよ」と照れくさそうに言った。


シン・シティ」の女性は娼婦かストリッパーか娼婦あがりの殺し屋しか出て来ないが、みんな男より強いのに男に尽くし男を立てる。最高に都合のいい女ばかり。だからヒーローたちはみんなヤクザものだが彼女達を「天使だ」「女神だ」と崇拝する。もちろん彼らはフランク・ミラーの投影だ。
これは、「娼婦萌え」だね。


サム・ペキンパーがそうだった。
ペキンパーは生前のインタビューで娼婦の素晴らしさを語っていたと記憶するが、彼の映画では娼婦はみんな黄金の心を持った天使や女神として描かれ、
逆に人妻や淑女はみんな一夫一婦制にあぐらをかいた売女として描かれ、虫けらのように虐殺されたり、輪姦されたり、ペキンパーのお仕置きを食らう。
これは実は彼の単なる性癖ではないような気がする。
前も書いたが、ギリシャの神殿に使える乙女が実は客と性交していたり、日本の白拍子や巫女が売春をしていたり、聖女(処女)と娼婦は最も近いものとして古今東西、認識されていたわけで、ペキンパーとかフランク・ミラーはそういう古い感性の人なんだろう。


「娼婦萌え」物語で最も美しいのは『罪と罰』で、最も恐ろしいのは『タクシードライバー』だ。
 これって、ロリコンやアニメ萌えと最も遠いように見えるが、本質的には同じなんじゃないか。
シン・シティ』を観ていてオイラの頭に浮かんできたのは、日本によくある「男の作詞家が水商売で働く女性の気持ちを勝手に理想化して一人称で書いたムード歌謡の世界」だったのだ(続くかも)。