投票所に行ったよ

TomoMachi2004-11-02

映画秘宝読者にはおなじみ、ボンクラ男パトリック・マシアスを投票所に連れて行ったよ(写真)。
http://www.patrickmacias.comパトリックのサイト

パトリックは今年で32歳。日本のヤクザ映画やアニメについて原稿を書くフリーライター
オイラはこいつを日本に連れて行ってオタクのルポを書かせた(11月15日にアメリカで発売)
http://www.amazon.com/exec/obidos/tg/detail/-/1880656884/qid=1099576926/sr=8-1/ref=sr_8_xs_ap_i1_xgl14/002-0880409-9380060?v=glance&s=books&n=507846


高校中退。年収300万円弱。もちろん未婚。
狭いアパートはオモチャとマンガとゴミで足の踏み場もない。
そして、この年まで投票に行ったことなどない。


「誰に投票してもいいから、いっぺんくらい投票に行けよ」と言うとパトリックは
「カリフォルニアはどうせ民主党が勝つに決まってるし、
一票の重さは田舎より軽いから意味ないよ」とやる気なし。
「意味がなくてもいいから、オイラにいっぺん有権者が生まれるところを見せてくれ」
と説得して、有権者登録させたわけ。


で、朝、テレビを見るとサンフランシスコ市庁舎あたりの投票所では長蛇の列。
一時間くらい並ぶことになると言っている。
「一時間も並ぶの嫌だ」と駄々をこねるパトリックを連れて投票所を探す。
それはパトリックの家の隣の老人ホームだった。
投票所の係員もそこに住む老人。みんな70歳以上だ。
投票に来たのはパトリックだけ。
あの行列は何なんだ?


パトリックが有権者登録証を見せると、おばあさんはゆっくりそれを覗き込んで
「パトリシアさん?」
え? と書類を見るとパトリックじゃなくてパトリシアという女の名前になってる。
「これは書類の間違いですよ」とパトリックが言うと、
おばあさんは「ならいいわ」と、身分証明書を見もせずに投票用紙をくれた。いいかげんだ。
投票用紙はマークシート方式だが、それに投票箱にパトリックが入れようとすると
箱についたセンサーがそれを拒否した。
マークシートの埋め方が悪いと検知したのだ。
パトリックは塗りつぶさないで線を引いただけだった。
「やったことないんだ」
彼は高校を中退した後、運転免許証も含めて一切のテストを受けたことがない。
マークシートを初めて見たという。
結局、オイラが塗り潰し方を教えてやった。


投票すると「I VOTED(僕、投票したよ)」というステッカー(シール)をくれた。
「こんなの歯医者以来だ」
アメリカでは子供が医者で注射されたり歯医者に行ったりすると「よくがまんしたね、ごぼうび」
とシールをくれるのだ。
32年の人生で賞に縁のないパトリックにしてみれば何十年ぶりかのごほうびだ。


投票所を出るとパトリックは「なんかおごってよ。投票してあげたんだから」
てめえの国民としての権利の行使として投票したんだろうが!


世界を支配する国アメリカの市民としての自覚のない30男と一緒にバーに入ると
昼間っからビール飲んでビリヤードやってる連中が。
みんな革ジャンにタトゥーにピアス。
要するにこのミッションという場所はバイカーとパンクとGOTHとジャンキーと、フリークばっかりが住む地域なんだよね。
しかし、1ブロック先の投票所はガラガラなのに、バーには人が一杯でいいのかね。


結局、全米での18〜24歳の投票者は全体の10パーセントにもならなかった。
エミネムマイケル・ムーアが若者を引っ張り出そうとした努力は空しい結果に終わった。
チーム・アメリカ」のトレイとマットの主張「19歳の何も知らない若造は投票に行くな」は現実になったのだ。