PTU

TomoMachi2004-09-27

ジョニー・トー月間の最後に、去年の作品『PTU』。

香港の繁華街・尖沙咀で威張り散らしているマル暴の刑事ラム・シュー(『ザ・ミッション』のデブ・ガンマン)が、チーマーたちのオヤジ狩りにあって拳銃を失くす。
夜の街を警邏するPTU(警察機動部隊)の隊長サイモン・ヤムは、それを報告せずに一緒に探してやろうと言う。
ところがチーマーのリーダー「馬尾」が敵対するグループに刺されて死んでしまう。
馬尾はヤクザの親分「禿頭」の息子だった。
事を重く見て、CID重案組(重犯罪特捜班)の女捜査官ルビー・ウォンが乗り出してきた。


黒澤明の『野良犬』にヒントを得たといわれる『PTU』だが、構造はまったく違う。
わずか5時間ほどのタイムリミットに話を絞り、夜の香港の繁華街を、ゴリゴリの戦闘部隊PTUと、腐敗したマル暴デカと、エリートのCID、チーマー、そしてヤクザたちが駆けずり回り、最後には全員が激突する。


最初にサイモン・ヤムが「制服を着た者はみんな仲間だ」と言うように、縄張り争いを超えた警察官同士の結束を描いているのだが、どうも感動しにくい。
というのも、PTUは拳銃の行方を知るために街中の悪ガキどもを片っ端からしばくのだが、やり方がモロに拷問だ。監視カメラの電源を抜いたり、痣が残らないよう平手で何度も叩き、素足で蹴る周到さ。
CDIのほうも、何かの液体を無理やり飲ませたり、とにかく拷問しほうだい。
警察のもみ消し体質が執拗に描かれるので、不気味な印象のほうが強い。


しかし、なんでもないように見えるディテールの積み重ねが最後の対決に集約していくシナリオは面白い。『マッスル・モンク』もそうだったが、ジョニー・トーは夜の街の濡れたアスファルトをカメラが低いアングルで水平に横移動して撮ったショットが美しい。


香港の三池らしく随所に「ハズシ」があるのも面白い。たとえばラム・シューは実はチーマーに殴られたのではなくバナナの皮で滑って転んで頭を打ったのだ。いまどきバナナの皮。しかも二度も。