上杉隆氏への公開質問状

本日深夜の上杉隆氏とのニコ生です。
http://www.nicovideo.jp/watch/1331900374
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今回、上杉隆氏に対して行う質問は「重箱の角をつつくような」「些細なこと」ばかりかもしれません。
「彼は巨悪と戦っているのだから、そんな些細な疑惑で足をひっぱるな」と思っている方も多いでしょう。
ただ、ここで些細な疑惑によって、明らかにしようとしているのは、彼の資質の問題です。
彼は『新聞・テレビはなぜ平気で「ウソ」をつくのか』という著書も出しています。
彼自身、↓このビデオで以下のように言っています。
http://t.co/1tkXKRsn

上杉隆アメリカの、海外の新聞は何度間違えてもいいんです。ただ、

>一回嘘ついたら終わりなんです。嘘は一発で終わり。(中略)アメリカ中のメディアに対してブラックリストに載っちゃうからもう就職できないんです。で、あと、信用を失うから

今日は、彼自身の言葉を基準に上杉隆について、皆さんに判断してもらうことになります。


これから、私、町山が上杉隆氏に質問する内容をここに少しずつ挙げていきます。
その理由は3つです
上杉隆氏が反論の準備をするため
 時間節約のため、背景の説明なしに、質問をしていきます。
 ですから、事前に読んでもらうと便利です。
②オーディエンスの人たちが、事前にポイントを理解できるように。
 事前に読んでおくと、わかりやすいです。
 リンク先の資料も見られます。
③事前に質問について意見を求めたいため。
 「この質問は必要ない」「これは是非、聞いてほしい」といった意見を募集します。
 ご意見は町山のツイッターにお寄せください。
 twitter.com/tomomachi
 ご意見を取り入れて、質問を選び、順番も決め、質問状も修正していこうと思います。


★最初に私、町山智浩の、上杉隆氏が取り組んでいる問題に対する立場をあらかじめ言っておきます。
①私は、狭い日本では原子力発電をやめるべきだと考えています。
②東電の原発の運営、プロパガンダ、事故の際の対応、どれもウソやごまかしだらけだと怒っています。
③私は、官房機密費については、なんらかの形で使途を明確にすべきだと考えています。
④私は、日本に限らず、記者クラブゴールデン・グローブ賞のハリウッド外国人記者クラブも含みます)の閉鎖性と腐敗を憎みます。

しかし、事実でないことには、事実でないと指摘します。


次に、上杉隆氏に謝罪します。
こういう事態になった最初のきっかけを作ったのは、私でした。すみません。

ある人からの、上杉隆氏のキラキラ降板についてのツィッターに、私は上杉隆氏に見つかると面倒くさいと思って、名前を出さずに以下のようにコソコソ答えていました。

すると、2012年1月26日(木)22時52分34秒に上杉隆氏から以下のツイートが飛んできたのでびっくりしました。これは、上杉隆氏がエゴサーチして、僕を捕捉した、ということだと思いますが、
僕も、同じようにして、反論することがあるので、他人を責めることはできません。


ところが、その後、町山は上杉隆氏に対してカンカンに怒ったわけですが、いったいなぜ? という疑問を抱いている人も多いかと思うので、答えます。
このトゥゲッターにあるように愚弄されたからです。

http://togetter.com/li/249672
最初は礼儀正しいやりとりでしたが、私が途中でツイッターを離れていた(歯医者に行ってた)間に上杉隆氏の無礼が始まりました。
その後は文化放送を使って一方的に虚偽の内容を語られました。
http://1000nichi.blog73.fc2.com/blog-entry-1540.html
ですから、私が上杉隆氏に怒っているのは、「彼が怒らせた」からです。
要するに彼は「お前はジャーナリストじゃないんだから黙ってろ」という意味のことを言っています。
映画評論家という職業に対する侮蔑的な書き方もしています。
それは、上杉隆氏が批判する、記者クラブと同じ権威主義に陥っています。
ちなみに、上杉隆氏の自由報道協会は、「おしどりマコ」という「芸人」さんに取材記事を書かせて問題化しました。


もうひとつ、上杉隆氏からぶつけられるであろう質問にもここで答えておきます。
町山が上杉隆を批判するのは、TBSを守るためではないのか?。

答えはイエスで、ノーです

僕が守りたいのは、TBSではなく、「キラ★キラ」の現場スタッフです。
上杉隆氏の降板で「キラ★キラ」ファンの間では「TBSやキラ★キラが権力に屈した」という批判が高まりました。
しかし、TBSという会社と、キラキラの作り手たちは違うものです。
特にTBSという会社は裁判などの揉め事をとにかく嫌がる会社です。
日垣隆という出演者が、TBSの経理について不正があると事実無根のことをツイートした時も、TBSの法務は何もせず、会社としても抗議しませんでした。
逆に、ツイートで日垣隆に反論したプロデューサーに黙るよう命じました。


ですから、平野官房長官から抗議があった際、TBS上層部は当然、嫌がります。
しかし、実際は、上杉隆氏を番組に起用し、彼に好きなだけ自由にしゃべらせたキラキラのスタッフは出来る限り上杉隆氏を守ろうとしたのです。
しかし、上杉隆はTBSに対して週刊ポストで「私を潰そうとしている」と書いたため、ついに上層部は上杉隆の降板を決めました。
上杉隆を起用し、守ろうとした現場プロデューサーは、上に負けてしまったため、なかなか、上杉隆氏本人に告知できませんでした。
そして、そのうちに震災が起こり、3月15日に本人に告知、という経過になったのです。


現場スタッフが、TBS上層部から上杉隆氏を守ろうとしていろいろ頑張ってたのは見て知っていましたが、
彼らは組織の一員なので、上部の許可なく、事情を説明することが許されていません。
だから、僕がせめて、いわれのないキラキラ批判には抗弁しようと思っていました。


それと、私は、4月から始まる「キラ★キラ」の後番組に出演することになりそうです。
でも、言っておきますが、キラキラの後番組は、スタッフ総入れ替えです。
ですから、僕が「キラ★キラ」をかばったことで留任した、ということはないです。



では、ここから公開質問状になります。



質問1.「平野官房長官ネコババ」発言に裏付けはあるのか?
 まず先に言っておきますと、私は官房機密費は存在するし、使途が不明瞭なのは問題だとする立場です。
 使途不明である以上、上杉隆氏がキラキラで話した「平野官房長官が機密費ネコババ」の可能性もゼロとは断言できません。
 ただし、上杉隆氏はネコババと言い切るだけの裏付けは取っていない、と考えます。

 2010年06月29日、上杉隆氏はTBSキラキラで「平野官房長官という人に勝手に3億円ネコババされている」と発言しました。ネコババとは個人的に公金を着服することです。平野氏はTBSに抗議しました。11月20日、キラキラでは以下のように謝罪が放送されました。
「平野前官房長官に勝手に3億円ネコババされている」という、主旨と異なる不正確な表現が使われました。
 上杉隆氏自身も週刊ポスト(2011年1月14・21日合併号)でこう言っています。
http://www4.atwiki.jp/shatteredglass/pub/images/wpost2011011421.png
http://www4.atwiki.jp/shatteredglass/pub/images/wpost2011011421_2.png
http://www4.atwiki.jp/shatteredglass/pub/images/wpost2011011421_3.png
http://www4.atwiki.jp/shatteredglass/pub/images/wpost2011011421_4.png

「たしかに『ネコババ』という言葉については、ネコババと疑われても仕方がない、というべきで、少し言い過ぎた可能性がある。妥協点として、ここは削除してもいい」

 以上などの件から、私は「上杉氏のネコババ嫌疑には裏付けがなかったのだ」と判断しました。もし、彼が裏付けをつかんでいたら、3億円着服は大問題なので、「削除」どころか追及していたはずです。



質問2.上杉隆氏は「町山は官房機密費はない、と言っている」と言っていますが、それに該当する私の発言はどれですか?
 上杉隆氏は、2012年2月22日、文化放送ソコトコにおいて、「町山は官房機密費の存在を否定した」と言っています。http://www4.atwiki.jp/shatteredglass/pages/22.html

上杉   官房機密費がないとか言い出した から、それはちょっと違うんじゃない、と。 

 同様の発言を、彼は自分のメルマガや3月11日のニコ生出演時にも言っています。
 それに該当する町山の発言はどこに存在しますか? 私は官房機密費は存在するし、使途が不明瞭なのも問題だとする立場です。機密費の存在を否定したことは一度もありません。疑問を呈したのはネコババについてだけです。


質問3 キラキラ降板は震災前の3月4日に決定しており、3月15日の東電批判とは無関係ではないのか?


私は、電力会社とその関係企業が広告によって民放や雑誌の反原発意見を抑えてきたと考えています。

それについて「キラキラ」で批判したこともあります(18分目)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm14318012


ただし、上杉隆のキラキラ降板については、東電は関係ないと考えます。
それは単純に時系列の問題です。


降板の直接の原因は「ネコババ」ですら、ないと思います。
その後の、週刊ポストの記事がいちばん問題だったからです。

先の週刊ポスト2011年1月14・21日合併号で上杉隆氏はTBSの謝罪を攻撃しています。

「それ(ネコババ)以外の部分については取材の裏付けのあるものだから、いっさい謝罪も訂正もする必要はない」
「一切我々は間違っていないし、譲ってはいけない」

さらに彼は「ネコババ発言を平野に知らせたのはTBSの政治部記者」「TBSは上杉を潰そうとしている」とTBSを激しく攻撃します。
「TBSは上杉を潰そうとしている」
放送局そのものを攻撃し始めた人を、出演させ続ける放送局は、やはり、ほとんどないだろうと思います。


 そして3月15日のキラキラ出演直後、上杉隆氏は降板を告げられます。
 それはたまたま、3月11日の震災後でした。
 その直後、小島慶子さんはツィッターで、降板の直接の理由は、上杉隆氏によるTBS批判(週刊ポストを指す。他にはないので)であり、自分も降板決定は3月上旬に知っていた、と説明します。http://togetter.com/li/112151
 また、最終回になった3月29日の放送で、以下のような会話があります(19分目)。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm13998142

小島慶子 私は実はね、3月4日の時点で(上杉隆降板を)聞いてたんですね、プロデューサーから。ただね、人にあなたの出演終わりですよ、というのはプロデューサーの権限なので、私からは言えないので、上杉さんに「次の仕事のことも考えておいたら?」って薄っら言ってはおいたんですけど
上杉隆 (15日の通達の)一週間前に、そういう噂も入ったんです。いろんな形で


 つまり少なくとも3月8日には上杉隆氏も降板を知っていた。これは彼自身が2012年2月5日発行のメールマガジンVol.103で書いたことと一致します。

「実は、私自身の耳にも、先々週までには『上杉降板の噂』が届いていた」

 ところが、上杉隆氏は「降板の理由は、3月15日の放送で東電を批判したため」と言うようになります。
http://www4.atwiki.jp/shatteredglass/pages/13.html#id_c9428130
 震災前に降板が決まっていて、本人も知ってたのに、どうして3月15日の放送がその原因になるんですか?

 

 本当は、単なる「言い過ぎ」でもめただけだったのが、偶然、震災が起こったため、東電を批判してメディアを干された「殉教者」へと自己イメージを作り上げていったのでしょう。


そもそも、問題の3月15日の上杉隆氏の放送は、東電から圧力がかかるような内容だったのでしょうか?
 2011年3月15日の放送内容↓
http://www.dailymotion.com/video/xoq8j2

文字起こし↓
http://ameblo.jp/touch-0329/entry-10833771757.html(Web魚拓)
http://ameblo.jp/touch-0329/entry-10833771052.html((Web魚拓)
http://ameblo.jp/touch-0329/entry-10832390623.html(Web魚拓)

これを聞いた東電がその場で彼を降ろさせるような問題発言はどこにもありません。

要するに全部、東京電力のTEPCOのコマーシャル入ってるかなんか知らないけれど、誰一人質問しない、批判はしない。
それも東電と保安院の会見に入ってフリーランスとかがやっと質問し出してからなんですよ。

この程度です。
ちなみに町山はその3日後の放送で、RCサクセションの「サマータイム・ブルース」を放送し、小島さんは歌詞を朗読しています。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm13896707

その後もTBSラジオではdig!などの番組で、神保哲生さんや宮台真司さんらが厳しく原発安全神話を批判し続けています。
3月15日の上杉隆氏の放送とは比べ物にならないほど厳しく。でも誰も降ろされてません。

質問4 なぜ、答えが有料メルマガなのか?
 以上のような疑問を私はツイッター上杉隆氏にぶつけると、なぜか彼は自分の有料メールマガジンで「反論」します。
 彼のメルマガは日本のクレジットカードを持っていない自分には読むことができません。
 相手に届かない反論に意味があるのでしょうか?
 これと逆というか、似たような例というか、上杉隆氏は安倍元総理大臣から事実誤認について公開質問されたことがありました。
 http://www.s-abe.or.jp/topics/weeklyissues/326
これに対して上杉隆氏は「すべて安倍事務所に直接、証拠も提示済み」と説明。
 http://togetter.com/li/86251
 相手が公開で質問したのに、なぜ公開で回答しないのですか?
 これは、上杉隆氏が求めている自由で開かれた報道という理念と矛盾しませんか?


質問5 なぜ、「NHKの正社員だった」と言い続けるんですか?
 しかたがないので、日本のクレジットカードを持っている人に頼んで上杉隆氏のメルマガを読みました。
 2012年2月1日発行のメールマガジンVol.102に彼はこう書いています。

町山智浩は)すでに決着している私のNHKやNYTの経歴について言及してきた

 それは、決着したはずの経歴疑惑を彼がまた、歪めているからです。
 上杉隆氏のいう「決着」とは、NHKについては、『週刊現代』2007年10月13日号「上杉隆氏の“経歴崩壊”」を指します。
http://web.archive.org/web/20100527060711/www.uesugitakashi.com/archives/51105071.html
 その記事で、上杉隆氏は以下のようにインタビューに答えています。

――NHKに入局した事実はあるのですか。
「記者職に内定しました。内定後、内定保留という形で、働いていたので、それは正式なものではありませんね。その形で、(入局を)待っていたので、その間、2年1ヶ月の勤務実態はあります」
 わかりにくい言い訳だが、やはり大学を卒業できず、入局できなかったようだ。
――「NHK報道局勤務」は、読者に誤解を与えませんか。
「私は実際に勤務実態があったと認識しています」
――記者として在籍していたということですか。
「そういうことは一度も書いておりません

――「元NHK記者」という経歴の記事もありますが、それは出版社が間違ったということでしょうか。
「はい、そうです」

「正社員ではなかった。そう言ったこともない。周囲の誤解だ」という意味ですね。
 ところが、それから1年以上経った2009年7月15日の「ビジネスメディア誠」で、上杉隆氏は以下のように言うのです。
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0907/15/news054.html

大学を卒業し、NHKに就職しました。

 さらに1年後の2010年7月14日の岩上安身氏との対談で上杉隆氏はこう言っています。
http://sekainomaue.blogspot.com/2010/07/5ust20100714.html

上: そのあとNHKに入ったわけです。経歴詐称やりまして。
岩: バイト?
上: 違います。ちゃんとホントに内定してるんですよ。内定して・・・コレ話します? 
岩: 話してください。正社員なの?
上: 正社員です。

 自分で「正社員」と言っているんですが、何が目的なのでしょうか?

質問6 NYタイムズの署名記事はなぜ見つからないのか?

上杉隆氏はNYタイムズの東京支局でリサーチのアシスタントをしていたと言っており、私はその事実を疑っていません。


しかし、それでも疑問があります。
「ビジネス・メディア誠」2009年7月15日のインタビューで上杉隆氏は以下のように言いました。
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0907/15/news054_2.html

ニューヨーク・タイムズを受けることに。すると支局長に「インターンをしながら3カ月間、働いてくれ」と言われた。その後、2つのスクープを取ったこともあり

NYタイムズは1851年からの記事を総てアーカイヴ化しています。執筆者や取材協力者名だけでなく、記事の中に出てくる人名も検索の対象になります。
しかし、3月8日に僕が、Uesugi Takashi という2つのワーズで検索したところ、ひとつも記事は出てきませんでした。現在、出てくるのは、僕がその検索をツイートしたせいで、Takashi Uesugi という言葉が3月8日の検索ワードのトップに来た、という記事だけです。 http://query.nytimes.com/search/sitesearch?query=%E2%80%9Dtakashi+uesugi+%E2%80%9D&more=date_all
名前が出ない記事だったのか?しかし、3月5日の郡山の講演で、上杉隆氏は以下のように言っています(36分目)。
http://www.ustream.tv/recorded/20915359
36分目「NYタイムズに居るときに、たとえば1,2行の記事を書くわけです。…日本で言うとベタ記事です。ところが、東京支局のリサーチ・アシスタントのtakashi uesugiによると…記事本体よりも名前の方が長くなって
ベタ記事でも署名が載った、と。では、なぜ2本のスクープは検索できないのか?

私が以上のような細かい事実にこだわるのは、これらの上杉隆氏の発言には、なんら公共性がなく、彼自身の保身以外の動機がないからです。
彼の発言には細かい事実の歪曲が含まれている場合が多く、しかも、間違いを訂正しない傾向があります。


ウソを追及しているはずの人がウソをついてもいいのでしょうか?


そのような人が、人々の命にかかわる情報を発し、社会に影響力を持つことは危険ではないでしょうか?


コンテイジョン』は新種の伝染病によるパニックを描いた映画ですが、ポスターのコピーはこうです。
「恐怖は、ウィルスより早く感染する」
この映画で最も恐ろしいものとして描かれているのは、病気そのものよりも、ジュード・ロウ扮するネット・ジャーナリストによる恐怖デマの拡散です。


彼は、最初にブログで「新種の伝染病が発生!」と書いたことで、人々から「政府が隠そうとしている恐ろしい事態を暴く、正義のブロガー」としてカリスマ化していきます。
彼は「政府やマスコミはみんなウソつきだ!信じるな!」と叫び続け、人々は恐怖のために彼を信じて、疫病と戦うプロたちの言うことを聞かなくなります。
災害時に人は不安のために、より恐ろしいことを信じるようになります。
そして、より恐ろしいことを語る人が、真実を暴く正義の人として救世主視されてしまうのです。


追記
対談の議事録


対談の論評

http://soitgoes.blog110.fc2.com/blog-entry-1627.html

http://1000nichi.blog73.fc2.com/blog-entry-1612.html

http://d.hatena.ne.jp/kissuijp/20120317/1331989935