『小説すばる』でケン・ラッセルの『肉体の悪魔』

TomoMachi2009-03-21

小説すばる』に「町山智浩のトラウマ映画館」という連載をしてるんですが、
今、発売中の号でケン・ラッセルの『肉体の悪魔』を扱っています。
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肉体の悪魔』の原作はオルダス・ハクスレーの『ルーダンの悪魔』という歴史研究書。
『ルーダンの悪魔』はルイ14世時代のフランスの修道院で実際に起きた悪魔憑き事件を、20世紀の視点で冷静に分析した本。
 田舎町ルーダンにやって来たセクシーな司祭(オリバー・リード)は町中の女たちを熱狂させた。
 その熱狂は男子禁制の修道院内にも感染し、なかでも修道院長(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)は一度も会ったことのない司祭に恋焦がれ、彼に犯される淫夢を見るほどだった。
 ところが司祭は極秘にある女性と結婚してしまった。司祭のファンたちは嫉妬に狂い、精神の均衡を失う。
 中央政府は、それが女性たちの性的欲求不満による集団ヒステリーだと知っていたが、権力を持ちすぎた司祭を葬るために政治的に利用する。
 司祭が悪魔に魂を売って、修道女たちに悪魔を取り付かせたのだと。
 そして、政治ショーとしての悪魔祓いと魔女狩り裁判が始まる。


ヴァネッサ・レッドグレーヴの淫夢シーン

いわゆる「聖痕」がどのようにしてできるのかを見事に表現している名シーン。


先日、スキー事故で亡くなったナターシャ・リチャードソンは、このヴァネッサ・レッドグレーヴと、映画監督トニー・リチャードソンの娘。トニー・リチャードソンはジャンヌ・モローと浮気したことでヴァネッサから離婚された。でも、リチャードソンはバイセクシャルでもあって、エイズで死亡した。レッドグレーヴはその後、フランコ・ネロと結婚した。
ナターシャはケン・ラッセル監督の『ゴシック』で『フランケンシュタイン』を書いたメアリ・シェリーを演じて売り出した。


肉体の悪魔』は08年にワーナー・ブラザーズからノーカット版のDVDが出る予定だったが、
直前になって、内容が反カソリック的であることにビビったワーナーが発売を中止した。
(劇場公開用にカットされたバージョンはVHSで過去に発売されています)


小説すばる』の連載では、同じルーダンの悪魔憑き事件を元にしたポーランド映画『尼僧ヨアンナ』および、明らかにルーダンの史料を基にして書かれた『エクソシスト』の関連について分析しています。
『尼僧ヨアンナ』の悪魔祓いシーン。ルーダンでも実際に観客を呼んで「見世物」として行われた。