「使用」を主張して「格納」を理由とするミクシイ

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Mixi利用規約に新しく加えた18条について、以下のように釈明した。

(今回の18条改定は)当社の以下対応について同意いただくもので、当社が無断で使用することではありません。

1 投稿された日記等の情報が、当社のサーバーに格納する際、データ形式や容量が改変されること。
2 アクセス数が多い日記等の情報については、データを複製して複数のサーバーに格納すること。
3 日記等の情報が他のユーザーによって閲覧される場合、当社のサーバーから国内外に存在するmixiユーザー(閲覧者)に向けて送信されること。

はあ?
だったら、この三つをそのまま書けばよかったじゃん!

それに、この三つをいくら読んでもそれが以下の18条と関係があるようには読めない。

第18条 日記等の情報の使用許諾等
1本サービスを利用してユーザーが日記等の情報を投稿する場合には、ユーザーは弊社に対して、当該日記等の情報を日本の国内外において無償かつ非独占的に使用する権利(複製、上映、公衆送信、展示、頒布、翻訳、改変等を行うこと)を許諾するものとします。
2ユーザーは、弊社に対して著作者人格権を行使しないものとします。

この18条は「使用」についての規定だ。
ところが、その理由として後から示された三つは「データの格納」と「送信」についてなのだ。
「使用」について何も言ってない。

この釈明には、ユーザーを煙に巻いて、本当の意図を隠そうとするいかがわしさを感じる。
ユーザーが怒ったのはもちろん「使用」についてであって、「格納」云々なんかじゃないんだから。


ミクシイは後から「勝手に出版したりすることはない」とも説明したが、
ならば、いったいなぜ、「使用」を条項に加えたのか?
真の目的と動機は何なのか?
それを説明する必要がある。



今回のミクシイにあきれたのは以下の4つ。


1 ユーザーの「使用前提」の足元をすくった
オイラがこの「はてな」の他にミクシイを使っている理由は、それがクローズドだと信じていたからで、
それがミクシイの大きなセールスポイントだったはずだ。
だから、ミクシイは「友人のみに公開」にして、「はてな」には書けないプライベートなことや、原稿に書く前のメモ書きなどを書いていた。
それが「複製、上映、公衆送信、展示、頒布、翻訳、改変」されると知ってたら、最初から書かないっての!
「他の人には見られない伝言板ですよ」と言われてそれを信じて使っていたら突然、「その伝言板に書かれた内容を私たちも使う権利があることにしました」と後から言われたのと同じじゃん。
 
 しかも、ミクシイは、かなりの量で一種の「出会い系」として使われている。
 他では公開できない性体験や、きわどい写真もUPされている。
 彼らは絶対に「使用する権利を許諾」なんかしてないよ。
 部屋につけたカメラで撮った映像を「複製、上映、公衆送信、展示」するかもしれないラブホテルには行かない人のほうが多いわけで。


 「人に見られたくない内容を書くほうが悪い」「お前の書くものに売られる価値はないから騒ぐな」などと書いている者もいるが、内容や価値とは関係ないよ。
 「勝手に公開したり売ったりしない」という「前提」で参加させた後でその「前提」を覆すのは不当だというだけの問題だ。


2 条文というものの意味がわかってない。
「使用する権利を許諾したものとする」と条文に書いた以上、
「でも出版する気はないです」と口でいくら言っても意味がない。
 条文はその条文自体が問題なのだ。
 その条文が、ミクシイによる勝手な出版の可能性を開く条文であること自体が問題なのだ。
 契約文というものは、その文章から想定できるすべての可能性を考慮して書かれなければならないし、読まねばならない。
 だから、オイラはその条文からストレートに想定できる事態を3月3日の日記のタイトルにしたんだよね。
「この文面だと、『出版する』と言ってるのと同じことじゃん!」と。
「あなたのものを私が売る権利を許諾したものとします」と書かれたら、「勝手に売る気かよ!」と怒るのが人として当然の反応だ。
 それに、後から「いや、許可なく売る気はありませんよ」などと説明されても、「売られる可能性」を許すことはできないよ。


3 過去の前例をまったくケーススタディしていない。
 実は同じような条文で、ユーザーが怒ったり、大量に辞めた件は、過去からあちこちで起こっている。
 ライブドアやここ「はてな」でもあった。
 今回のミクシイは、それからまったく学んでいない。
 そんな条文を、ユーザーの同意も得ずに一方的に加え、しかも遡及的に行使しようとしたら、
 いったいどんな反発を招くか予想もできなかったミクシイの経営能力は、非常に低いと判定せざるを得ない。


4 ユーザーこそが資産だということがわかっていない
 18条改定を発表した段階で、IT関係に詳しい投資家なら、ユーザー離れの可能性を予測できる。
 18条改定発表の直後からミクシイの株は下落し続けている。
 ユーザー離れだけでなく、それを予測できなかったミクシイの経営能力の評価も下がった。


 今回の18条改定は、ミクシイにあがっているコンテンツをミクシイが利用したいと考えたからなのは確実だが、実は、ミクシイの価値は、そのコンテンツにあるのではなく、ユーザーの数にある。
 「ユーザーはタダでミクシイを使わせてもらってるのに文句言うな」とか書いてる人はわかってない。
 タダだからこそ大量のユーザーが集まり、その数が会社の価値となり、株価を支えているのだ。


 ニュース・コープがマイスペースを莫大な金額で買ったが、その値段は、マイスペースのシステムではなくて、ユーザー数につけられたのだ。

 
 グーグルやマイクロソフト、ヤフーなどはミクシイを買いたいと思っているだろうし、数十億円で買うかもしれないが、その値段は、ミクシイのユーザー数に対してつけられる値段だ。
 システムではないし、コンテンツでもない。ましてや社員の人材でもないんだ。


 コンテンツを使いたいなんてセコい商売っ気よりも、ユーザーの数を減らさないようにすることのほうが重大だったと思うよ。
「文句があるなら辞めろ」ではなくて、「どんなことでもしますから辞めないでください」というくらいの態度でないとダメだ。ユーザーが減るたびに会社の価値が下がるんだから。
そのくらいのこと、わかってると思ったんだけどなあ……。