写真は『ランド・オブ・ザ・デッド』でテロリスト狩りの精鋭部隊に参加させられ、対ゾンビ装甲車「デッド・リコニング」号に乗り込む、娼婦でパンクの女戦士、アーシア・アルジェント姐御!
ジョージ・A・ロメロに会った。以下は彼の話のダイジェスト。インタビュー全文は後ほど雑誌その他に発表します。
「私のゾンビは進化している。『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』ではショベルを使うくらいだったが、『ドーン・オブ・ザ・デッド』ではライフルを拾って構える。『デイ・オブ・ザ・デッド(死霊のえじき)』では拳銃をちゃんと撃てるようになる。そして今度の『ランド・オブ・ザ・デッド』では、さらに進化する。
実は、私のゾンビ映画は、『革命』についての映画だからだ」
ロメロははっきりと言う。
「私は、最初の『ナイト〜』を、60年代カウンターカルチャーの革命が挫折したことへの苛立ちから作った。
60年代、若者たちがベトナム戦争に反対し、黒人たちが人種差別に反対してアメリカのエスタブリッシュメントに対して反乱を起こしたが敗北してしまった。『ナイト〜』のゾンビたちは敗れ去った革命の亡霊なんだ。
次の『ドーン〜(ゾンビ)』のゾンビが象徴するものは違う。彼らは消費社会のなかでCMに洗脳されたアメリカ人みんなだ。彼らは何も考えずに意味もなく毎週ショッピングモールに集まり、必要もないものを買いまくる。いくら消費しても飽きることをしらない。我々はどんどん、何も考えずに消費するだけのゾンビになっていくんだ。
80年代の『デイ〜(死霊のえじき)』はレーガン政権の対外強攻政策で右傾化するアメリカだ。政府は軍事費を増大させ、戦争を煽るが、その一方で経済は破綻し、ホームレスが爆発的に増加した。それを、ゾンビに囲まれた地下基地とそれを支配する軍人たちに象徴させた。
そして、今回、私が作った『ランド・オブ・ザ・デッド』の「人間たちの島」には9:11テロ以降のアメリカを象徴させている。
機関銃を載せたジープに乗った兵隊たちがゾンビの町をパトロールする場面は、誰が見てもイラクをパトロールする米兵に見えるだろう。
金持ちたちが住む高層ビルは世界貿易センターのイメージだ。また、そのビルの下で貧しく暮らす人々はブッシュの金持ち優遇政策と、何年も続く不況で苦しむアメリカの労働者階級だ。
「島」を支配するデニス・ホッパーは「わしに味方しない奴は皆、敵だ」「テロリストには決して屈しない」「私は責任を果たす」と言う。そのセリフはブッシュの演説のパロディだが、ホッパーの癇癪もちみたいな演技はラムズフェルド国防長官をマネしている。
ホッパーは共和党支持者でブッシュを支援してるんだけど、プロだし、ユーモアのセンスがあるから、この役を喜んで演じてくれたよ。
そして、高層ビルを爆破しようとするテロリストが「島」を脅迫する。主人公はホッパーに雇われて、テロリスト狩りに行かされる。彼はホッパーの軍事独裁政権の言いなりにはなりたくないが、ビルが崩壊すれば普通の人々も巻き込まれるからテロリストと戦わなければならない。この主人公は右翼的なブッシュ政権とテロの板ばさみになって、仕方がなく戦争に行って犠牲者を出し続ける普通のアメリカ人そのものだ」
ロメロに話を聞いたこの日、アメリカの下院議員でやっとイラクからの撤退を求める決議案が提出されることになった。
決議案には共和党のウォルター・ジョーンズ議員も参加している。
南部出身のジョーンズ議員は、戦争が始まる前には、戦争に反対したフランスを非難して、議会食堂の「フレンチフライ」を「フリーダムフライ」と言い換えようと言い出したほどタカ派だったが、アメリカ兵が今までに千七百人も死んでいることにやっと危機感を抱き始めたという。
調査会社ギャラップの世論調査では「イラクから撤退すべきだ」と考えるアメリカ人が6割を超えた。しかし、今年2月の調査では「撤退を支持する」アメリカ人は49%しかいなかったのだ。
ジョーンズ議員は「イラクには大量破壊兵器は存在しなかった。この戦争に意味はない」と言っている。
あんたら、遅すぎるよ! あと8ヶ月早く気づいてればブッシュ再選はなかったかもしれないのに!