ゴジラのことを書いてて思い出しちったよ。
オイラ、たしかビオランテの頃、馬鹿な本作ったんだ。
その名も『Theゴジラcomic (宝島コミックス)』。
オイラがやりたかったのは、70年代初めの特撮やアニメのコミカライゼーション。
アレですよ、石川賢の『ウルトラマンTタロウ』で、タロウが敵の怪獣の頭に手を突っ込んでビル街を血と脳漿でグチャグチャにしたり、桜多吾作の『マジンガーZ』シリーズで、兜甲次たちが世界中を敵に回してゲリラ国家みたいになったりするでしょ。
まるでシド・ヴィシャスがシナトラの『マイ・ウェイ』を歌ったような、そんな暴走カバー・バージョンが満載された『冒険王』を床屋で狂ったように読んでたわけ。
つまり、当時の漫画家はガキ向けテレビ番組をマンガにしろと言われて、つまんねーなあと思うのではなくて、逆に「それって、タイトルさえ同じなら何を書いてもいいってことじゃん!」と、子供向け雑誌でセックス、バイオレンス、それに政治ネタを爆裂させてたんですな(なかには石森章太郎の『ひみつ戦隊ゴレンジャー』みたいに原作者自らしょうもないエロパロにしてしまうという例もあるけど……)。
とにかく、ゴジラをダシにしてやりたい放題やろうと思って、編集協力の安藤くんと近藤くんと一緒に、一度一緒に仕事をしたかった先生方に原稿を依頼した。
実相時昭雄監督は原作を書いてくれた。主人公はなんと河崎実! 主人公がだよ。『怪奇大作戦』みたいに古都を舞台に河崎カントクがセックスする! 絵は加藤礼次郎だ。
その河崎カントクは、中島春雄をモデルにした怪獣着ぐるみ俳優を主人公にしたスポ根ものの原作を執筆。まあ、巨人の星ですよ。ちゃんとゴジラ養成ギプスや「父ちゃんは日本一の着ぐるみ役者です!」ってセリフも出てくる。絵は本人も着ぐるみ役者の破裏拳竜だ。
そして大学の先輩だった吉岡平先生に「ゴジラがアメリカ第七艦隊と戦う話書いてよ」と頼み込んで、原子力空母とゴジラの格闘を書いてもらった。絵は大ファンだった冨本たつや先生!
それに『ガンダム』や『イデオン』の脚本家、松崎健一先生や麻宮騎亜先生、安永航一郎先生など参加者は超豪華。しかも表紙はあさりよしとお先生に描いてもらえた。
『空想科学読本』のイラストでおなじみ、近藤ゆたか先生は、大戸島伝説の御璽羅が赤穂浪士と戦うという天才にしか書けない話。
そして、『冒険王』で宇宙猿人ゴリのルサンチマンを描ききった一峰大二大先生に書下ろしを依頼してガキの頃の夢を自分勝手にかなえた!
そして、そして……『ゲッターロボ』『ウルトラマンタロウ』『変身忍者嵐』でジャリ番を血と内臓で汚しまくった狂える天才、石川賢先生にもついに依頼! 嵐がその角で敵を串刺しにする場面を越える残酷シーンを期待したら……できあがったのは『ゴジラ対山田課長』というホームコメディでした。はらほれひれはれ。
http://www.freefactory.net/~y-sirais/M12.html
しかし、この『TheゴジラCOMIC』で最大の問題作は、日本カルト漫画史に燦然と輝く『地上最強の男・竜』の風忍先生の書き下ろしだ!
期待どおり、まさに奇跡のようなマンガでした。
ここにリンクした先に素晴らしい感想があります。
http://www.chukai.ne.jp/~gallery/baka11.html
http://tsun153.exblog.jp/m2004-08-01/#885247
できあがった本を手にしたオイラは思った。
ガキの頃、床屋で読んでた『冒険王』を、ついに自分で再現したよ!
「こども電話相談室」を聴きながら床屋の美人でいい匂いのする奥さんに髪を刈られてるうちに、初めてあそこが硬くなったんだよなあ……。
印刷所がマンガをやったことのないところで「タチキリ」というものを知らず、小口から避けて面付けしやがったので、徹夜で手作業で版下直したり、けっこう苦労して作った本なのに、出してみると評判はさんざん。
表紙コピーは「こんなゴジラが見たかった」だけど「見たかねえよ! ダボ!」とか特撮系の雑誌に叩かれた。
おととし日本に帰ったら『TheゴジラCOMIC』が古本屋で100えんで叩き売られてました。くくく……。