煮詰まった時は植木等かバーホーベンだ!

TomoMachi2005-04-06

ムシャクシャする時は植木等ポール・バーホーベンの映画を観るに限る。
この世にゃ善も悪もクソもねえ! ってな気分にしてくれるぜ。


というわけで『グレート・ウォリアーズ(炎のグレ−ト・コマンド)』のDVDを観る(縄跳びと腹筋しながら)。
こいつはシナリオもバーホーベンだから100%バーホーベン汁だ。


舞台は1501年のヨーロッパ。
領主アーノルフィが自分を追い出した城塞都市を奪還すべく、傭兵達と攻撃している。
この当時は国民国家などないから、兵士達は自分の私利私欲でしか行動しない。
傭兵達は情婦や自分の子供、それに枢機卿まで引き連れた生活共同体だ。
枢機卿は戦闘前の傭兵たちに聖体(パン)を配る。
傭兵マーティン(ルトガー・ハウアー)は横から聖体をぐしゃっとわしづかみにしてムシャムシャ貪り食う。
城壁の内側になだれ込む傭兵たち。
枢機卿も剣を握り、倒れた敵兵たちに片っ端からとどめを刺していく。
傭兵隊長ホークウッドが建物の中から狙撃される。
ホークウッドはカーテンの向こうに隠れた狙撃手を斬る。
頭をバックリ割られたのは若く美しい修道尼だった。
城を制圧した傭兵達は男を殺し、女を犯して略奪の限りを尽くす。
傭兵の子供は犯されている女の耳からイヤリングをむしり取る。
頭を割られた尼さんは脳に障害を受けて壊れた機械仕掛けの人形のように痙攣し続ける。
当時は下着がないので陰部がむき出し(カメラはそれをわざわざ股間のほうから写す)。
罪の意識に苛まれたホークウッドは尼さんを引き取って面倒を見たいと考える。
それには金が要る。
領主アーノルフィはホークウッドに、傭兵に報酬を払わずに追い出したら褒美をやると言い出す。
ホークウッドは自らの部下である傭兵を裏切って彼らを一文無しで放り出す。


マーティンたちは寒さと飢えに苛まれ、マーティンの情婦は子供を死産する。
小さな酒樽に自分の赤ん坊を押し込むマーティン。
息子の墓穴を掘っていると地面から聖マーティンの像が出てきた。
元兵士の聖人マーティンの像は剣を握っている。それを見て枢機卿は神の啓示だ!と叫び、
マーティンは傭兵達を一種のカルト集団として率いて領主に復讐を誓う。
自分の赤ん坊の入った樽を泥の中に放り込んでそれを踏みにじるマーティンの姿には映画監督の道を選ぶ代わりに最初の子供を中絶したバーホーベン自身が投影されているそうだ。


領主は自分の息子スティーブンのためにアグネス姫(ジェニファー・ジェイソン・リー)を招聘した。
ジェイソン・リーは当時23歳だが童顔と幼児体型でまるで少女のように見える。
途中でアグネス姫は侍女に「私は男と交ったことがない。するところを見せなさい」と命じて護衛の兵とセックスさせる。そこにスティーブンが現れる。


政略結婚を嫌がったスティーブンだが、アグネスと二人きりになる。
アグネスはある光景を見て胸をときめかせる。
それは縛り首にされて木からぶら下がった二人の泥棒の腐乱死体だった。
カラスについばまれて破けた腹から垂れ下がったはらわたの下の地面をアグネスは掘り始める。
「縛り首の木の下にはマンドラゴラがあるのよ」
マンドラゴラはマンドレイクともいう人間の形をした根菜。
「これを一緒に食べた二人は永遠の愛で結ばれるというわ」
「縊死した死体は尿と糞と精液を垂れ流す。それが地面に落ちてマンドレイクを育てたんだ」と語るスティーブンはアグネス姫と一緒にマンドレイクを食べて口づけする。腐乱死体の下で。


そこを巡礼者に化けたマーティンたちが襲撃し、アグネス姫を誘拐してしまう。
アジトに戻ったマーティンたちはアグネスを輪姦する。
「すげえ! 処女だぜ!」
一番乗りはもちろんマーティン。傭兵達は男も女も一緒にアグネスを神輿のように担ぎ上げマーティンに突き刺す。絶叫。
子供の叩く太鼓のリズムに合わせてみんなでアグネスを動かしてピストン運動させる(『徳川SEX禁止令』か!)。
あっという間に放出してしまうマーティン。
彼をアグネスは妖艶な笑みを浮かべて抱きしめる。
「あなたの女にして。他の奴らにやらせないで」
しかし、略奪品を独占したら部下にしめしがつかない。
「よし、次の番だ!」とマーティンは叫んで部下に順番を譲るが、透き通るように白いアグネスの裸身を見て惜しくなったので、わざと家事を起こしてそれを邪魔する。
破瓜の血をじっと見つめるアグネス。


翌日、やりそこなった部下は馬車で移動中に腕を縛ったアグネスの口にペニスを押し込む。
マーティンたちは聖マーティンの像に導かれて近くの城を攻撃する。
城の兵を皆殺しにする様を見ながら笑うアグネス。
城主の妻は幼い娘を抱えて城の塔から飛び降りて命を絶つ。


ティーブンは街道を旅する貧しい人々のなかに、アグネスが着ていたドレスを着た娘を発見する。
「これはアグネス姫の服だ! 娘! お前はこれをどこで手に入れたんだ? 言え!」
しかし、娘は何も語らない。
「なぜ言わない! なぜ黙っている!」
娘は黙って口を開けた。そこには舌はない。
娘の保護者らしい女が言う。
「この娘はほんの小さな頃に兵隊達によってたかって犯されて、舌を切り取られたんだよ」


と、ここまでで映画はやっと半分。
以降、延々と欲望と裏切りとセックスと血と内臓と糞尿と腐肉と泥だらけの中世絵巻がバーホーベンの敬愛するヒエロニムス・ボッシュのタッチで描かれる。
バーホーベン、今こそ復活して、「正しさ」をふりかざす独善的なブタどもにクソ食らわすような映画を作ってくれ!