虫ブームの頂点に叩きつける感動巨編!

その漫画の主人公吉田ヨシミは私立探偵。浮気の調査や失踪者探しが主な仕事だ。
世の中の裏面を嫌というほど見つめ続けながらも、はかない希望を捨てられない吉田。
ハードボイルドなサングラスの奥に隠された吉田の優しさを知り、彼を慕う者たちも多い。


たとえば、清二という若者。彼は人々から差別されてきた一族の出身だ。
「俺たちのほうが先住民なのに、なぜか今は土地を奪われ、差別され、虐殺されてきた!」
怒りに燃える清二はグレてさんざんワルもやった。
しかし、吉田に出会って清二は変わった。
「わかってくれるのはヨシさんだけだ」
 吉田だけは清二の怒りと悲しみを理解してくれた。
「いつまでも過去の歴史引きずってても仕方ねえや」
そう言って笑いながら去る清二の後姿を吉田はまぶしい思いで見送った。


それからしばらく経った。吉田はふと清二を思い出した。
「最近いそがしくて、清二と会ってないな……。元気かなあ……」
ひさしぶりに見た清二は黴菌をバラ撒く無差別テロリストに変貌していた。
あれから、清二に何があったのか?
吉田は武器を取るしかなかった。
「やめろ清二……。やめないと……」
「撃てよ! どうせ親も兄弟も皆、殺られたんだ!」
「清二……」
 吉田が見つめる清二の目は「撃ってくれ! ヨシさん」と語っていた。
「清二いいいいいいい!」
 吉田は泣きながら清二を撃った。
 殺虫剤で。
 清二は人類よりも何億年も前から地球に暮らすゴキブリだった。


 というわけで、昆虫探偵吉田ヨシミの活躍をまとめた『昆虫探偵ヨシダヨシミ』(青空大地・著)読みました!

昆虫探偵ヨシダヨシミ (モーニング KC)

昆虫探偵ヨシダヨシミ (モーニング KC)

 虫や動物と話せる男ヨシミがカブトムシの浮気の現場をつきとめたり、子どもを置いて家出したタガメの奥さんを探します。
 といっても虫をまったく擬人化せず、正確な生態に基づいた描写とセックス(交尾)、バイオレンス(虫の喧嘩)、ドラッグ(樹液)あふれるハートウォーミングでマヌケなストーリーが展開します。
 これはぜひ、アリンコが戦死者を追悼して復讐を誓う異常映画『フェイズ4 戦慄!昆虫パニック』と併せてお楽しみください!