ディズニーはいよいよ身売りに向けて値段の交渉に入ったが、CEOのマイケル・アイズナー批判も出そろった感じだ。
日本でもディズニー研究書がいくつか出ているが、アイズナーを持ち上げた本ばかり。まあコビないと本作らせてもらえないからね。
しかしアイズナーという男は実は80年代以降のハリウッド映画をダメにした元凶なのだ。
70年代終わりにABCテレビからパラマウント映画の経営者に就任したアイズナーと兄貴分のバリー・ディラーは視聴率がすべてのテレビ界のやり方をハリウッドに持ち込んだ。彼らはそれを「ハイ・コンセプト」と呼んだ。「ハイ」と聞くと高尚そうだが、これは「三十秒以内に要約できる内容」という意味。そうでなければ、老若男女、バカもいっぱいいる一般人をテレビに引き付けられないからだ。
ハリウッドは60年代に客をテレビに取られ、全映画会社が倒産もしくは倒産寸前になった。崩壊したスタジオ・システムに、コッポラやスピルバーグやルーカスやスコセッシやマイケル・チミノやジョン・ミリアスやブライアン・デ・パルマなどの映画オタクが入り込み、70年代ハリウッドは彼ら監督が主導権を握る「映画作家の時代」になった。そして『ゴッドファーザー』や『タクシードライバー』など名作の数々が生まれた。
しかし、映画会社からすれば監督の芸術的わがままに振り回される状況は不快だし不安だ。そこでテレビから来たアイズナーとディラーは映画作りの主導権を監督から映画会社側に取り戻そうとしたのだ。
アイズナーがパラマウントでプロデューサーたちに配った伝説的なメモが後に流出したがそこにはこう書いてあった。
「我々はもう映画史に貢献しない。芸術にも貢献しない。映画を通じて社会的メッセージも出さない。ただ金を儲けること、それだけが我々の仕事だ」
そして、そのメモを受け取り、アイズナーに教育されたのは、『トップガン』のドン・シンプソンとジェリー・ブラッカイマー、『ダイ・ハード』のジョエル・シルバー他、80年代アクション大作のプロデューサーたちなのである。
……おっと長くなりすぎた。この続きは次の『サイゾー』にでも書こう。