アメリカの国民健康保険を嫌がってるのは誰か?

TBSラジオ毎週金曜日午後3時3分から出演している「キラ★キラ」、
本日は建国の歴史まで遡ってアメリカの医療保険について話します。
http://www.tbsradio.jp/kirakira/2010/04/201042-2.html

先週ついに、オバマ大統領は医療改革法にサインした。
日本の国民健康保険のような政府経営の医療保険がないアメリカでは、民間の保険会社と契約するしかない。
しかし、民間の医療保険は相手の足元を見て値上げを続け、現在の世帯平均の年間保険料は8000ドル(80万円)。
これでは高すぎてワーキング・プアや失業者には入れないし、過去や現在に病気がある人は加入を拒否される。
そのため、医療保険に入れなかった人3200万人が、これからは連邦政府経営の保険で救われることになった。
そのほか、アメリカの医療保険の問題はこのニューズウィークの記事が自虐的に書いていてわかりやすいです。
http://newsweekjapan.jp/stories/us/2009/08/post-409.php


しかし、法案が通過した今でも、共和党はそれを撤廃すると宣言しているし、
共和党の州検事長がいる14の州では医療保険改革法を憲法違反で訴える構えだ。
連邦政府が保険加入を義務付けるのは州の自治を侵害する憲法修正10条違反」というのだ。
CNNのアンケートによれば今回の医療保険改革に不満を持つアメリカ人は59パーセントもいるという。★


先進国で唯一、国民皆医療保険のないアメリカで、なぜこれほど公的保険を嫌う人々がいるのか?

このビデオには公的保険に反対する人々の心理がよく表れている。


下院議会で医療改革法案に投票が行われた21日、オハイオ州コロンバスの民主党議員の事務所前に保険反対派が集まった。
彼らに一人立ち向かったのは、パーキンソン氏病で歩くこともできないレッチャー氏。
パーキンソン氏病のために保険会社から加入を拒否されたレッチャー氏はオバマ大統領の保険改革で救われる。
「パーキンソンになったら医療保険が必要だ」と書いた札を持ったレッチャー氏を、保険反対派の一人が
「あんた、金を恵んでほしいのか? でも、この国にはタダのものなんか、ないんだ!」と罵倒した。
さらにもう一人のワイシャツにネクタイの男が1ドル札をレッチャー氏に投げて「金が欲しいならくれてやるぞ。もっと欲しいか」とからかった。
群衆は大笑いした。「共産主義者め!」と叫んでいる声も聞こえる。
「今、自分は保険に入っているから、保険に手を出さないでくれ。失業者や医療費を多く使う病気がちの人のために負担が増えるのはごめんだ」という人の気持ちを悪い意味で象徴するビデオだ。


同日、議事堂に入る民主党議員に保険反対派が群がり、アフリカ系議員に唾を吐きかけた。

保険反対派が掲げるプラカードには「俺の保険に手を出すな」「自分の保険料は自分で払え」「国民皆保険社会主義だ」「オバマ共産主義者だ」などと書かれている。
国民皆保険では富裕層がワーキングプアの保険料を負担する形になる。ワーキングプアには黒人やメキシコ系などのマイノリティが多い。
皆保険に反対する「ティーパーティ」と呼ばれる運動家の8割は白人。半分以上が年収1000万以上の高額所得者である。
今回の保険改革は年収2000万円以上の高額所得者への増税で賄われる。


この問題の根底にはアメリカ建国以来の中央集権への反発が隠れている。
それについて詳しくはポッドキャストで聴いてください。
http://www.tbsradio.jp/kirakira/2010/04/201042-2.html


★実はそのうち13%は今回の改革が反対派に妥協した内容になったことに不満を持つ人々。彼らは左派で、他の国のように公的保険だけにすればいいと考えている。また民主党内の反対派はほとんどカソリックで、中絶費用を政府保険が負担することに反対したが、オバマ大統領が「中絶費用を政府が負担しない」大統領令を出したので保険賛成に転じた。