シドニー・ポラックの最高傑作は『大反撃』だ

TomoMachi2008-05-27

シドニー・ポラック監督が死んだ。
世間では『追憶』や『トッツィー』が代表作と言われているが、
実は『追憶』以降のポラックは『コンドル』以外はあんまり冴えないのだ。
『ランダム・ハート』『サブリナ』みんなカスだった。
アカデミー賞取った『アウト・オブ・オフリカ』なんて噴飯物の大駄作だ。


ポラックが輝いていたのは劇場用映画デビューしたての頃だ。
『彼らは廃馬を撃つ』の映画化『ひとりぼっちの青春』、
黒人と白人の友情を描くアクション西部劇『インディアン狩り』
それに、ヨーロッパ戦線を幻想的に描いた『大反撃』だ。

アメリカ軍の小隊を率いるバート・ランカスターがアルデンヌの森で、
霧の中にたたずむ古城に通りかかる。
その古城の主、伯爵は性的に不能なので、美しい妻とランカスターを寝かせて跡継ぎの子種を得ようとする。
伯爵にとって男のプライドよりも、ヨーロッパの美を集めた城を守ることが至上なのだ。
そこにバルジ大作戦で猛反撃に出たドイツ軍が押し寄せる!
『大反撃』はまるで、おとぎ話のように幻想的で、アンニュイでエロチックでのんびりした奇怪な戦争映画だ。
ユーゴで撮影されたのでナチの戦車はT34がスタンドインを演じているが、
フォルクスワーゲンビートルが水に沈まないことを実際に証明するシーンや、
対空機銃の射撃シーン、ラストの壮絶な城攻めなどには兵器マニアも狂喜した。

トランシルバニアの古城に来たナチス・ドイツが吸血鬼と出会う『ザ・キープ』は絶対にこの『大反撃(原題Castle Keep)』に影響されて書かれたと思う。