アカデミー賞を予想する

TomoMachi2005-02-25

アメリカではアカデミー賞の授賞式はスーパーボウルと同じで、誰かの家や飲み屋に集まってテレビを観ながら予想して遊ぶ。
ここでも予想ごっこをしてみよう。


アカデミー賞の予想は競馬よりも選挙の予想に近い。
「これがいい映画だから」ということじゃなくて、「これが投票者には好かれそうだから」という理由で予想する。
ゴールデングローブはジャーナリストの投票だから、作品や演技の良し悪しが重要だが、アカデミー賞の投票者は映画関係の業界人だから、業界内の人望や業界内の政治的判断が要因となる。
ということでざっと予想してみるけど、繰り返すけどこの予想は作品や演技の良し悪しとは関係ありません。

★主演男優賞
ジェイミー・フォックス「レイ」
クリント・イーストウッドミリオンダラー・ベイビー
レオナルド・ディカプリオ「エイビエイター」
ジョニー・デップネバーランド
ドン・チードルホテル・ルワンダ
アカデミー賞では実話映画が強くて、実在の人物のモノマネが強くて、身体障害者や難病モノが強い(ディカプーは『ギルバート・グレイプ』の知恵遅れ少年役でも助演賞にノミネートされている)。すると今回はレイ・チャールズ(盲目)のマネ対ハワード・ヒューズ(強迫神経症)のマネがこの三つに当てはまる。しかしハリウッドはマネーメイキング・スターにはなかなか賞を上げない判官贔屓の傾向がある。トム・クルーズジム・キャリーハリソン・フォードなど、ギャラの高いスターはけっこうもらってない。だからディカプーは不利。
★予想 ジェイミー・フォックス


★ 主演女優賞
アネット・ベニングビーイング・ジュリア」
カタリーナ・サンディーノ・モレーノ「マリア・フル・オブ・グレース」
イメルダ・スターントン「ヴェルダ・ドレイク」
ヒラリー・スワンクミリオンダラー・ベイビー
ケイト・ウィンズレット「ネバーランド
アカデミー賞は人体改造が好きだ。太ったり痩せたり、メイクしたりで別人になると賞が取り易い。そして美男美女が弱い。かくして二コール・キッドマンやシャーリーズ・セロンは醜くなることで主演賞を獲得した。今回は映画のなかで普通の体で登場し、みるみる全身に筋肉をつけてボクサーに変身するヒラリー・スワンクが一番の「改造女優」(しかも美人じゃないし)。性同一障害の女性を演じた「ボーイズ・ドント・クライ」に続いて二度目だが。
★ 予想 ヒラリー・スワンク


助演男優賞
ジェイミー・フォックスコラテラル
モーガン・フリーマンミリオンダラー・ベイビー
アラン・アルダアビエイター
クライブ・オーエン「クローサー
トーマス・H・チャーチ「サイドウェイ
これは難しい。まずジェイミー・フォックスは主演賞の本命なので外れるだろう。トーマス・H・チャーチは女好きのバカ中年を演じてチンチンまでさらして最高に笑わせるが、アカデミー賞ではコメディは弱い。「業界内人望」でいえば圧倒的にモーガン・フリーマン。この人は俳優達にとっては神のような存在だ。でも「ミリオンダラー・ベイビー」のキャラは「許されざる者」や「ショーシャンクの空に」とまったく同じだし、こんな大物に今さら賞をやってもという気持ちもあるかも。「クローサー」を舞台劇の頃から演じてきたクライブ・オーエンもすでにゴールデン・グローブを受賞しているほど評価が高い。「人体改造」にあてはまるのは「アービエイター」で悪徳政治家を演じたアラン・アルダ。これは観客は誰もアルダだとは気づかない化けぶり。出演時間はわずか数分だが、アルダは業界内人望もあるので、「恋に落ちたシェイクスピア」のエリザベス女王みたいな感じで受賞するかも。
★ 予想 アラン・アルダ

助演女優賞
ケイト・ブランシェット「アービエイター」
ローラ・リニー「キンゼイ」
ヴァージニア・マドセンサイドウェイ
ソフィー・オコニド「ホテル・ルワンダ
ナタリー・ポートマンクローサー
本命とされるのはケイト・ヘップバーンをモノマネしたケイト・ブランシェットアカデミー賞は「実在の人物のモノマネ」が大好きだが、ブランシェットの場合、かくし芸大会のようにわざとらしいので嫌っている人も多い。ヴァージニア・マドセンはかすかな心の機微を表現する難しい演技が評価されたが、こういう目立たない仕事はアカデミー賞では理解されにくい。ローラ・リニーはゲイやスワッピングまで実践する性の研究家キンゼイを支えた妻の役で大学生時代から老年までを演じる。「ビューティフル・マインド」のジェニファー・コネリーのように狂った天才を支える妻、という役はけっこうアカデミー賞にはウケがいい。
★ 予想 ローラ・リニー

★ 監督賞
テイラー・ハックフォード「レイ」
クリント・イーストウッドミリオンダラー・ベイビー
マーティン・スコシージ「アービエイター」
マイク・リー「ヴェルダ・ドレイク」
アレクサンダー・ペインサイドウェイズ
「業界内人望」ではなんといってもイーストウッドだが、ここは今まで5回も候補に挙がっていて一度もオスカーを受賞していないスコセッシだろう。「アービエイター」は決して彼のベストワークではないが、ハリウッドは今まで彼にオスカーを渡しそびれてきたからこのへんであげとかないとマズいという政治的判断があるだろう。それにスコセージは被害妄想気味ですぐキレるから、これで取れないと何するかわからんし。
★ マーティン・スコセージ

★ 作品賞
「レイ」
ミリオンダラー・ベイビー
「アービエイター」
ネバーランド
サイドウェイズ
今回の作品賞ははっきりいって「アービエイター」と「ミリオンダラー・ベイビー」の一騎打ちである。「サイドウェイ」に勝ち目が薄いのはアカデミー賞でコメディは勝ったためしがないため。
すでにこの日記にも書いたように「ミリオンダラー・ベイビー」はある理由によって映画業界人は絶賛しにくい映画である。一方、「アービエイター」は黄金時代のハリウッドを舞台にしたいかにもハリウッド的な大作なので、すんなりと票を集めやすい。
★ 「アービエイター」


ということですが、オスカーは毎回、何かしらの番狂わせが起こる。
もちろんそれが面白いわけだけど。