イングリッシュジャーナルで越智道雄教授と対談

本日発売の「イングリッシュジャーナル」で、町山の師匠である明治大学名誉教授の越智道雄先生とアメリカについて対談しました。

ENGLISH JOURNAL (イングリッシュジャーナル) 2013年 04月号

ENGLISH JOURNAL (イングリッシュジャーナル) 2013年 04月号

町山智浩『キャビン』論


予測不可能ホラー映画『キャビン』は今週末公開です!
劇場用パンフレットには町山智浩が、映画を既に観た人のための解説をしてます!

『キャビン』論
 映画を観終わった後で、お読みください

 町山智浩

 映画を間違えたかな?と思った人は多いだろう。
 オープニング、ワイシャツにネクタイの中年男ふたりがダラダラと世間話をしながら、大きな研究所のような建物の中をカートで走り始めるからだ。
あれ? 森の中の山小屋を舞台にしたホラー映画を観に来たはずなのに、おかしいな。
そう思うと、いきなりダーンとCABIN IN THE WOODSのタイトル。そして森の小屋に遊びに行く5人の若者たちが描かれる。ごく普通のホラー映画のように。じゃあ、さっきの研究所は何だったのか? 観客は最後までその謎と格闘し続ける。
『キャビン』は『スクリーム』(96年)以来ひさびさのホラー映画脱構築映画の傑作だ。
『スクリーム』の舞台となる町で若い男女が次々に残虐に殺される。『13日の金曜日』『ハロウィン』『暗闇にベルが鳴る』『プロムナイト』など70年代から80年代に流行したスラッシャー映画のひとつに見える。ところが登場人物のひとりでホラー映画オタクのランディが「ホラー映画で生き残る方法」という話を始める。
「その1、セックスしないこと」たとえば『13日の金曜日』ではクリスタル湖というリゾート地の山小屋に遊びに来た男女がセックスしていると殺される。
「その2、酒やドラッグもダメだ」酔っぱらった青年はふらふらとトイレに行って殺される。
「その3、『すぐに戻ってくる』と言って一人でどこかに行くのも危ない。絶対に帰って来ない」
こうした「ホラー映画あるある」は『最終絶叫計画』などでさんざんギャグのネタにされるが、『スクリーム』は違う。ホラー映画のよくあるパターンを裏切り続けることで、次に何が起こるか予想がつかない、という恐怖を生み出した。
『キャビン』はそれ以上のことに挑戦する。襲われる若者たちは、金髪でセックス好きの娘、スポーツマン、ガリ勉(またはオタク)、道化者、そして処女という、幾百のホラー映画でおなじみのメンバー。ところが『キャビン』は、ホラー映画ではなぜ彼らが殺されるのか、その理由を説明するだけでなく、すべての恐怖物語に通じる「統一理論」すら打ち立ててみせる。
 小屋の地下室にはいろいろなアイテムが並んでいる。5人が選ぶアイテムによって召喚されるモンスターが変わる。それをモニターで監視する管制室の職員たちは、どれが選ばれるか賭けを始める。賭けのリストに書かれた「女を襲う木」というのはサム・ライミ監督の『死霊のはらわた』に登場する怪物のこと。地下室にあった丸いパズルを選ぶと、クライブ・バーカー監督の『ヘルレイザー』に登場する魔道士セノバイトを召喚することになっていたのが、後半のエレベータ・シーンで判明する。エレベータには、スタンリー・キューブリック監督『シャイニング』に登場する少女の双子も見える。つまり、すべてのホラー映画はこのシステムによって作られていた!
 いったい、このシステムは何か? 管制室の職員たちは「クライアントを喜ばせよう」と言う。クライアント(顧客)とは誰なのか? 観客は様々な仮説を立てる。これは素人を殺すところを撮影して配信する凶悪なテレビ番組なのかも? いや、主人公たちは人間ではなくコンピュータのプログラムで、すべてはゲームなのかも? 
 最後に明らかになる真相は、一般の観客の想像を超えているかもしれない。だが、ホラー小説のファンなら、途中のヒントで気付いたはずだ。ガソリンスタンドの偏屈な親父は管制室への電話で「古き者たちThe Old Ones」と言う。「古き者たち」とは、作家H・P・ラブクラフト(1830−1937年)が書いた『クトゥルフの呼び声』に代表される一連のホラー小説、いわゆるクトゥルフ神話に登場する言葉である。
「古き者たち」とは遥かな太古に異星から飛来した地球外生命体で、邪悪な力で地球を支配した。そのなかでも最も強大なのがクトゥルフという巨大な怪獣で、タコに似た頭部、イカのような触腕を無数に生やした顔、巨大な鉤爪のある手足、ぬらぬらした鱗に覆われた山のように大きなゴム状の身体、背にはコウモリのような細い翼を持った姿をしていると描写されている。「古き者たち」は現在、海底や地底に封じ込められているが、いつ再び地上に現れて世界を滅ぼすかもしれない。そんな怪物の再来を恐れる者、逆に再来を望む者、どちらも「古き者たち」を邪神として崇め、畏れる。この事実を記した書物ネクロノミコンを読んだ者は、恐怖のあまり発狂するという……。
「古き者たち」についてラブクラフトが書いた諸作品は彼の死後、クトゥルフ神話として体系化され、他の作家たち――スティーブン・キング菊地秀行ら――によって書き続けられている。この『キャビン』もクトゥルフ神話の系列に入る。ちなみに映画『エイリアン』シリーズも脚本家ダン・オバノンがクトルゥフ神話からヒントを得て書いた。『キャビン』の脚本ジョス・ウェードンは『エイリアン4』の脚本も書いている。だから『エイリアン』シリーズのヒロインで有名なシガニー・ウィーヴァーがシステムの管理人役で登場するわけだ。
『キャビン』の冒頭、血だまりに古今東西のいけにえの儀式が映される。人類は古代から、地下深くに封じられた古き邪神たちを鎮めるため、いけにえを捧げ続けてきた。幽霊や妖怪や殺人鬼はすべて、実はそのために存在した。なんと驚くべき真実!
 それだけではない。実は『キャビン』のメインタイトルの出し方はミヒャエル・ハネケ監督の『ファニー・ゲーム』(97年)のそれにそっくりなのだ。『ファニー・ゲーム』の二人の侵入者は観客に向かって「お客さんはこんなのが見たいんでしょう」と言いながら被害者を血祭りにする。その二人と『キャビン』の管制室の二人は重なってくる。
 さらにこの二人は惨劇を演出して観客を楽しませようとする脚本のジョス・ウェードンと監督のドリュー・ゴダードにも重ねられている。つまり、クライアント=古き邪神とは我々、ホラー映画の観客自身でもある。すなわち、今、これを読んでいるあなただ!

小説すばるで「アイズ・ワイド・シャット」

月刊小説すばるの連載、今月は「アイズ・ワイド・シャット」についてです。

小説すばる 2013年 04月号 [雑誌]

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サイゾーで「インビジブル・ウォー」


本日発売の月刊サイゾーの連載では、米軍内に蔓延するレイプの実態を暴くアカデミー長編ドキュメンタリー賞候補作『インヴィジブル・ウォー』について書きました。

サイゾー 2013年 04月号 [雑誌]

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「アイ・ウェイウェイ・ネヴァー・ソーリー」


TBSラジオ「たまむすび」、毎週火曜日午後3時から出演してます。
本日は、『アイ・ウェイウェイ ネヴァー・ソーリー』というドキュメンタリー映画について話します。

『セブン・サイコパス』は『その男たち凶暴につき』


映画秘宝は本日発売です!
町山の連載「USAレポート」は「セブン・サイコパズ」。

町山 「7人もの」ってジャンルあるよね?
――『七人の侍』から始まって、『荒野の七人』『黄金の七人』『ワイルド7』……。
町山 で、今回は『セブン・サイコパズ』って映画。
――「サイコパス」じゃなくて?
町山 Psychopathsと複数形だから。
――どっちにしろ放送しにくいタイトルですね。
町山 サイコパスって言葉は放送禁止じゃないよ。精神異常じゃなくて人格障害で、病気じゃない。壊れてない。正常に機能してる。銃が正常に機能して人を殺すみたいに。
――その表現微妙ですね。
町山 社会で成功したサイコパスも多いよ。×××とか×××とか××××とか。
――わー、やめましょう。
町山 監督は『ヒットマンズ・レクイエム』のマーティン・マクドナー
――殺し屋たちがベルギーでだらだら過ごす映画でしたね。
町山 まあ、『パルプ・フィクション』の影響で山ほど作られたノワール・コメディだよね。今回もそういうノワコメ。
――そんなジャンル名ないですよ。どんな話なんですか?
町山 『7人のサイコパス』って映画の脚本を書くシナリオ・ライターの話。
――なんだそれ。
町山 ハリウッドに住んでいる売れない脚本家コリン・ファレルが『7人のサイコパス』ってタイトルを思いつくけど話が出てこない。
――タイトルだけですか!
町山 ひとつだけ書いたのは、娘を殺されたクエイカー教徒の話。犯人に復讐したいけど、クエイカー教徒は一切の暴力を禁止している。だから、何もしないで、ただ犯人にストーカーし続けて精神的に追い詰めて殺そうとする。
――面白そうじゃないですか。
町山 でも、その話も友人の売れない俳優サム・ロックウェルがくれたネタ。要するにコリン・ファレルはまるでアイデアがない脚本家なの。で、ロックウェルがネタのためにコリン・ファレルの名前で勝手に新聞広告を出す。「サイコパスの人、面白い体験談を教えてください」
――危ないのが来ちゃうじゃないですか!
町山 応募してきた爺さんは、未解決の連続殺人事件の犯人を全部殺した正義の殺人鬼だと言う。1946年にテキサカーナで月夜の晩に8人を殺したファントム・キラーも、1968年から5人を殺したゾディアックも、彼が奥さんと一緒に処刑したって。
――いい奴……なんですかね?
町山 いっぽうロックウェルはバイトでペット誘拐をしている。ビバリーヒルズの大金持ちの愛犬を盗んで、クリストファー・ウォーケンが返しに行って謝礼をもらうサギ商売。
――せこいですねー。
町山 ところがギャングのボス(ウディ・ハレルソン)が大事にしていたチンを盗んだから命を狙われる。ロックウェルは大興奮。「七人の特殊技能を持った正義のサイコパスがギャングと戦う映画になるぞー!」
――映画と現実区別ついてないですね。
町山 面白いのは、ファレルたちが「こんな話はどうだ?」って言うと、そのアイデアがどんどん映像化される。途中で「いや、こういう展開のほうが」って違うバージョンでやり直したりして試行錯誤するわけ。
――北野武の『監督ばんざい!』みたいですね。
町山 そうなんだよ! ちゃんとファレルたちがたけしの『その男、凶暴につき』を観るシーンまであるからね!
――脚本家の試行錯誤を映像化した映画はフェリーニの『81/2』が元祖ですけど、そっちは『セブン・サイコパズ』とは関係なさそうですね。
町山 いや、『ピンクレディの活動大写真』の影響かも。
――それはないって!