君のためなら千回でも

TomoMachi2008-01-08

本日午後2時からのTBSラジオ『コラムの花道』では、うちの近所のフレモントという町にあるアメリカ最大のアフガン人街「リトル・カブール」と、そこで育った作家カーレド・ホッセイニについて話します。
http://tbs954.cocolog-nifty.com/st/2008/01/18_c180.html


実は先日、ホッセイニに直接会ってきたんですよ。
同じくらいの世代なんで、映画についての話が合うんだよね。


ホッセイニは65年にアフガニスタンに生まれて、ハリウッド映画を見て育った。
他の世界中の少年たちと同じく、スティーブ・マックイーンチャールズ・ブロンソンがヒーローだった。
マックイーンが『ブリット』で飛ばすムスタング・マッハ1に憧れた。
そのホッセイニは『ブリット』のロケ地に近いベイエリアで青年期をすごすことになった。
別にうれしいことじゃない。
アフガニスタンソ連に侵略されて、難民としてアメリカに移住したのだ。

79年にソ連に侵攻されて以来、このベイエリアには6万人のアフガニスタン人が移住した。
脱出のために全財産を失った彼らは最初、ガソリンスタンドや酒屋で必死に働いて子供たちを育てたが、
20年近く経つうちに子供たちは大学を出て、大企業に入ったり医者や弁護士になって、アメリカン・ドリームを実現していった。
ホッセイニも医者になり、社会的には成功した。
しかし、彼の心はいつも、故国アフガニスタンへの罪悪感に苛まれていた。
ホッセイニがアメリカン・ドリームを実現する間に、アフガンではソ連のバラまく地雷やオモチャ爆弾で子供たちが手足を失い、ソ連撤退後はタリバンイスラム原理主義による狂信的独裁で民衆を虐殺し続けた。
そして、今もタリバンは健在で、人々を殺し続けている。


ホッセイニは自分の故国への思いを小説に託した。
それが『カイト・ランナー』(改題:君のためなら千回でも)だ。

君のためなら千回でも(上巻) (ハヤカワepi文庫)

君のためなら千回でも(上巻) (ハヤカワepi文庫)


少年の頃、平和だったアフガンで一緒に凧揚げをした親友に捨ててきた祖国への思いを象徴させ、
ホッセイニ贖罪として書かれた『カイト・ランナー』は全世界で500万部以上を売り尽くす大ベストセラーになった。
そして、このたびスピルバーグのドリームワークスによって映画化された。『君のためなら千回でも』の邦題で2月9日に日本公開も決まった。
公式サイト
http://eiga.com/official/kimisen/

しかし、アメリカでは全米公開直前に突如公開が延期になった。
主役の少年たちを演じたアフガニスタン人の子役の家族が「このまま映画を公開しないで欲しい。我々は殺されるかもしれないから」と訴えたからだ。

ここから先はラジオで!